健康診断・人間ドックの結果をどう見る?

健康診断・人間ドックの結果をどう見る?

健康診断や人間ドックは早期に病気を発見し、早期に治療することを目的としていますが、重要なのは検査判定の次にどのような行動をとるかということです。主な検査項目からどのような病気の予備軍なのか、その判定は何を意味しているのか、要検査と判定されたらどうすればよいのかなど、検査結果を次に活かすための行動や自分の生活習慣に合わせた検査項目を選ぶポイントについて紹介します。
 

 

健康診断・人間ドックの主な検査項目

健康診断は、全身の健康状態を調べることを目的としたもので、一般的に「定期健診」と呼ばれているものは、法律によって実施が義務づけられている法定健診です。また、個人が自分で選んで受けるものが任意健診で、これが一般的に人間ドックと呼ばれるものです。
 

法定健診(定期健診)とは

法定健診は、その人の属性によって検査項目が異なります。たとえば乳幼児健診のうち1歳6か月健診、3歳健診は母子健康法に基づく法定健診のひとつです。労働者の法定健診は、労働安全衛生法によって事業者(企業)が労働者(社員など)に対し1年以内ごとに1回、定期的に行うことが義務づけられています。被扶養者(家族)は一部費用負担があることもありますが、同様の検査を受けることができます。自営業の人やその家族が年1回受けているものは、健康保険各法や高齢者医療確保法に基づいて実施されているもので、自治体が住民に実施する健康診査がこれに該当します。このほか、健康増進法によって生活保護受給者等を含む住民を対象にした健康診査があります。こうしたさまざまな法律によってあらゆる職業、年齢の人でも年1回の健康診査を受けることができるしくみになっています(表1)。
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このうち、赤字のものは特定健康診査(メタボ健診)の対象となる40歳未満で、医師が必要でないと認める場合は省略可能とされています。ただし、40歳未満でも5歳ごとの節目年齢(20、25、30、35歳)の健診では実施される項目もあります。また、任意ではあるものの、事業者(保険者)が行う職域検診として、定期健康診断・特定健康診査にがん検診が付加されている場合があります。国が推奨する胃がん(50歳以上)、大腸がん、肺がん、乳がん(40歳以上)、子宮頸がん(20歳以上)を同じタイミングで受けることで年1回、自分の健康状態を確認することができます。

 

人間ドックの検査項目の選び方

人間ドックは任意のため、法定健診に比べて高度かつ多項目について検査を受けることができます。自分が気になっている項目を選んで検査を受けることができるため、健康に対して不安に思っていることを解消でき、法定健診以外の病気の早期発見にもつながります。医療機関ごとに検査項目や費用が異なり、費用は自己負担となるため高額になることもありますが、保険者が人間ドックの費用の補助などを行っている場合があるため、事前に確認するとよいでしょう。

 

人間ドックは法定健診以外の項目を選ぶことでより精密な検査を受けることができます。たとえば生活習慣病がある人や飲酒・喫煙などの習慣がある人、家族が脳卒中になったことがあるといった人は、頭部CT検査やMRI検査などの項目がある脳ドック、生活習慣病のほか、息切れなどの症状が気になり始めている人は運動負荷心電図検査、冠動脈CT検査などの心臓ドック、男性で40歳以上の人は前立腺がんのPSA検査など、自分の気になっている病気や家族がかかっている病気に関連する検査項目があるかどうか、人間ドックを受ける医療機関で相談しながら決めるとよいでしょう。たとえば、すでに生活習慣病で通院をしていて定期的に検査を受けている場合にはその項目は除外するなど、オーダーメイドな検査項目を設定できるのが人間ドックのメリットです。

 

また、普段私たちが医療機関にかかる場合は何らかの症状があり、その治療の目的で受診します。それ以外でも受診するほどではないと感じているけれど気になっている症状を抱えている人は少なくありません。少し心配、気がかりといったことを問診時に伝えてみるのもよいでしょう。

 

健康診断で「要精密検査」と判定されたら

定期健康診断では、その結果がA、B、C、D、Eなどで示されることが多く、正常(基準値内)であれば「A」、要経過観察は「B」など、各健康診断の実施機関によって判定基準が設けられています。各健康診断結果の区分には説明が書かれているため、その指示に従いましょう。正常もしくは次回の健康診断まで経過をみるという場合を除いては、できるだけ早く健康診断の結果を持参して医療機関を受診しましょう。とくに要治療の場合には明らかな病気と考えられる状態で、できるだけ早く治療を開始する必要があります。また、すでに治療を受けている病気に関連する検査数値には「治療中」に該当する判定が記載されます。治療を受けている病気については問診でもれなく伝えるようにしましょう。
 

検査項目の基準値

検査結果の基準値は、検査を実施する企業が設定しています(表2)。判定だけでなく、設定されている基準値と自分の検査数値を確認し、自分の検査数値が正常範囲内であっても要経過観察や要検査に近い場合には要注意です。

表2 主な健康診断の検査基準値(参考)

項目

男性

女性

血圧

129/84mmHg以下

腹囲

84.9cm以下

89.9cm以下

赤色素量(Hb)

13.5~17.6g/dL

11.3~15.2g/dL

赤血球数(RBC)

427~570万/μL

376~500万/μL

GOT

30U/L未満

GPT

30U/L未満

γ-GTP

50U/L未満

血清トリグリセライド

30~149mg/dL

HDLコレステロール

40~89mg/dL

LDLコレステロール

60~119mg/dL

血糖値

70~99mg/dL

HbA1c

4.6~5.5%

 

※検査機関によって基準値の設定は異なります。自分の健康診断の結果表に書かれた基準値を確認してください。
 

人間ドックは何歳から? 自分のリスクに合わせて選択しよう

法定健診のように検査項目が示されているものは、健康を守るうえでの基本的な検査となります。がん検診がこの項目に入っていないのは、あくまでも任意で行われているためですが、病気の早期発見・早期治療につなげるためには、がん検診も含めた健康診断を必ず受けることが大切です。

 

病気のなかには遺伝的な素因が影響するものもあり、同じ年齢でも人によってリスクに差があることもあります。そのため、現在は健康上問題がない場合でも家族がかかっているものについては定期健康診断に追加オプションで検査を組み込んだり、人間ドックを受けたりと、年齢に関係なく自分のリスクとその病気の好発年齢で検討するのがよいでしょう。

 

人間ドックは費用負担が大きいものもありますが、病気が進行してからでは医療費の負担はさらに増大し、その後の仕事や生活にも影響が及ぶことがあります。

 

日ごろ仕事や家事、育児などで多忙な人ほど自分の健康は後回しになりがちです。年に1回、自分の健康状態を確認しておくことは安心材料になるでしょう。
 

ここがポイント!

・定期健康診断には年1回以上、会社員やその家族が受けられるもの、自営業者が受けられるものなどの法定健診がある

・検査項目が決まっている定期健康診断に対して、追加オプションによるがん検診や人間ドックは自分が受けたい検査を選ぶことができる

・人間ドックでは、リスクが高い疾患や気になる症状に関連するもの、家族がかかったことがある病気に関連する検査などを選ぶとメリットが大きい

・健康診断で「正常」「要経過観察」以外の判定だった場合には必ず医療機関を受診することが重要

 

<参考資料>

・全国健康保険協会:健診・保健指導

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g4/

(2024年11月15日閲覧)

・厚生労働省:日本の健診(検診)制度の概要

https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/000682242.pdf

(2024年11月15日閲覧)

・がん情報サービス:がんの予防・検診 がん検診 がん検診について

https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/about_scr01.html

(2024年11月15日閲覧)

・厚生労働省:事業者、健康診断機関の皆さまへ 労働安全衛生法に基づく定期健康診断等の診断項目の取扱いが一部変更になります(平成30年4月から適用)

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000194701.pdf

(2024年11月15日閲覧)

・厚生労働省:定期健康診断等における診断項目の取扱い等について

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000194626.pdf

(2024年11月15日閲覧)



宮崎滋(みやざき しげる)

宮崎滋
(みやざき しげる)

公益財団法人結核予防会総合健診推進センター所長
https://www.ichiken.org/
東京医科歯科大学卒業後、都立墨東病院、東京逓信病院等勤務を経て、2004年に東京医科歯科大学臨床教授に就任。以降、東京逓信病院副院長、新山手病院生活習慣病センター長を歴任し、2015年より現職。日本医学会評議員をはじめ、日本内科学会、日本肥満学会(名誉会員)、日本糖尿病学会(功労評議員)、日本生活習慣病予防協会(理事長)、日本肥満症予防協会(副理事長)などを務めている。