女性に多い片頭痛 痛み方の特徴とは?

女性に多い片頭痛 痛み方の特徴とは?

片頭痛は頭痛の代表的なもののひとつで、女性に多いことがわかっています。一度発作が起こるとズキズキとした強い痛みに襲われ、動くと痛みが増すなどして日常生活に大きな支障をきたすことがあります。医師の診察を受け、薬を服用することで予防ができたり、急に起こった強い痛みの軽減ができたりするほか、片頭痛の発作の原因となる生活習慣を見直すことも大切です。
 

 

ひどい頭痛の原因は?

頭痛には大きくわけて一次性頭痛、二次性頭痛があります。二次性頭痛は頭痛を引き起こす疾患によって起こるもので、その代表的なものとしてくも膜下出血や脳腫瘍などがあげられます。片頭痛は一次性頭痛のひとつで、脳などの病気はないものの、慢性的な頭痛を繰り返すものをいいます。一次性頭痛には、片頭痛のほか、緊張型頭痛、群発頭痛などがあります。

 

緊張型頭痛とは

緊張型頭痛には、月に15日未満起こる反復性緊張型頭痛と月に15日以上の頭痛が3か月以上続く慢性緊張型頭痛があります。頭が締めつけられるような痛みが起こるもので、30分〜7日続くことがあります。日常生活が送れなくなったり就寝中に痛みで目が覚めてしまうほどの痛みではないことが多いものの、集中力が低下したりイライラしたりしやすくなります(表1)。


表1 緊張型頭痛の特徴

種類

特徴

反復性緊張型頭痛

・痛みは軽度から中等度であることが多い

・時間とともに悪化する

慢性緊張型頭痛

・頭痛の頻度が高いほど痛みが強くなる傾向がある

・1日のなかで痛みの強さは変動するが痛み自体は持続する



緊張型頭痛の原因には、ストレスや不安、筋肉疲労(首や肩のコリなど)、頭痛薬の飲みすぎなどがあげられます。痛み止めの薬(NSAISs)や筋肉を緩める作用がある抗不安薬などによる治療で症状が緩和します。また、ストレスをためないことやデスクワークなどで同じ姿勢を取り続けないこと、眼精疲労も緊張型頭痛の原因となります。適度に身体を動かしたり、ストレスを解消したり、リラックスできる時間をつくることが予防につながります。

 

群発頭痛とは

群発頭痛は左右どちらかの一方のこめかみから目の周りにかけて激しい痛みが起こるものです。痛みは数週から数か月の間で群発的に起こり、睡眠中に激しい痛みに襲われることも多いのが特徴です。痛みとともに目の充血や涙が出るなどの症状が出ることもあります。発作が出ないときには数か月から年単位で症状が出ないこともありますが、一度発作が起こると連日、日に1〜3回(1〜3時間続く)激しい痛みが起こり、日常生活にも支障が出ることが多い頭痛です。

群発頭痛は20〜30歳代の人に多く、約85%が男性に起こり、女性には少ないといわれています。しかし、近年では女性の発症頻度も上昇しており、稀なものではなくなってきたとされています。

群発頭痛は1回の発作が15〜180分程度で片頭痛に比べて時間が短いこと、夜間に突然発作が起こりやすいことから医療機関の受診が難しいことが多く、頭痛時には自己注射薬による治療が有効です。一般的な鎮痛薬(NSAIDs)では痛みが取れないため注意が必要です。

 

吐き気を伴うことも……つらい片頭痛

片頭痛は女性に多く、年代では30歳代の有病率が約20%ともっとも高く、40歳代も約18%となっています※1。軽度から重度のものまで症状の程度には個人差がありますが、日常生活に及ぼす影響は全体の74%と高いことがわかっています※1

 

片頭痛の発症メカニズムについてははっきりとわかっていませんが、神経系が過敏で脳の神経細胞が刺激されやすい人に起こりやすく、神経が刺激を受けることで脳内に放出される物質が炎症を引き起こすといわれています。
 

片頭痛の症状と経過

片頭痛には月に15日以上の頻度で頭痛が起こるものが3か月以上続き、そのうち月8日は片頭痛の症状の特徴がある頭痛であるものを慢性片頭痛といい、それ以外のものを(頻度が低いもの)を反復性片頭痛といいます。反復性片頭痛の場合は年齢とともに発作が起こることもありますが、近年は月8回以上片頭痛発作が起こる慢性片頭痛の患者さんが増えているといわれています。

 

片頭痛は発作が起こると4~72時間程度続き、頭の片側がドクンドクンといった強い拍動性の痛みが出るのが特徴です。発作の前に気分が変動したり、眠気がしたりする予兆がみられたり、光がチカチカする視覚やピリピリする感覚、バランス感覚などに障害が出る前兆がみられる人がいます。光や音、匂いなどで症状が悪化する人が多く、暗く静かなところで横になっていないといけないほど強い痛みが出たり、吐き気・嘔吐を伴うこともあります。

 

片頭痛を誘発する要因

片頭痛は、睡眠不足や天候の変化、空腹、感覚刺激(光など)、ストレス、その他の要因で発症するといわれています(表2)。


表2 片頭痛を誘発・悪化させる要因

要因

内容

精神的要因

ストレス、ストレスからの解放、疲れ、睡眠(過不足)

女性ホルモン要因

エストロゲン(生理周期)

環境要因

天候の変化、気温差、匂い、音、光

生活習慣の要因

運動、食事をとらない、性活動、旅行

食事の要因

空腹、脱水、アルコール、特定の食品



片頭痛患者さんに対する調査によると、頭痛を誘発させる要因でもっとも多いのがストレス、次いで女性ホルモンのエストロゲンとなっています※1。そのため、エストロゲンが増える思春期には男性に比べて女性の片頭痛の割合が高く、生理の前後や生理中に片頭痛発作が起こる人もいます。

 

また、片頭痛は季節の変わり目など、天候や気温の変化が激しい時期に起こりやすくなります。とくに梅雨入りから台風が多く発生する秋までは環境が変わりやすいため、規則正しい生活を送ることを心がけましょう。
 

片頭痛を誘発する食べ物にも注意

片頭痛の患者さんは、頭痛がない人に比べて生活の質(QOL)や片頭痛を抱えながら仕事を行うことによる労働遂行能力(プレゼンティーイズム)が大きく低下することがわかっています。一方で、医療機関の受診率は30%といわれています※1、2。早期に頭痛外来や脳神経内科などを受診して適切な治療を受けることが重要です。また、生活習慣の見直しによって誘発リスクを避けることも大切です。

 

片頭痛を薬で予防する

片頭痛は、治療しても繰り返し発作が起きたり、日常生活に支障をきたしたりする場合には、予防薬を服用する治療もあります。予防薬を飲むことで、痛みが出るのを抑えるだけでなく、痛み止めの飲みすぎで起こる頭痛を防ぐこともできます。

 

片頭痛を治療する

片頭痛の治療は、症状が軽度から中等度の場合、痛み止めの薬(NSAIDsなど)が使われます。このほか、発作が出たときに片頭痛を誘発する物質が出るのを防ぐ作用のある薬(トリプタンなど)をすぐに使うことで痛みを抑えることができます。ただし、薬を使いすぎるとそれがさらなる痛みの原因になることもあるため、薬は医師の指示に従って服用しましょう。吐き気を抑える薬や抗不安薬などが処方されることもあります。

 

また、重度の片頭痛発作によって日常生活に大きな支障をきたしている場合には、発作が起きたときに群発頭痛の治療で使われる自己注射を行うこともあります。

 

生活習慣の見直し

片頭痛が起こるタイミングを把握することは生活習慣の見直しにつながります。たとえば生理前後に起こりやすい、ストレスが強いときに起こりやすいといった特徴を患者さん自身が把握するとともに、医師の診断の助けとなるのが頭痛ダイアリーです。日記をつけてその前の生活状況や心身の状態などを記録しておきましょう。

 

そのほか、ストレスを解消することやヨガ、有酸素運動、アルコールを控える、チョコレートやチーズなどの特定の食品、カフェイン(コーヒーなど)が片頭痛の誘発につながることがあります。患者さん自身が食べたものと発作が起きたときを記録し、誘発につながる食品は避けるように工夫しましょう。
 

ここがポイント!

・片頭痛は、脳などの病気がなく慢性的な頭痛を繰り返すもので、緊張型頭痛、群発頭痛と同じ一次性頭痛に分類される

・片頭痛は女性に多く、30歳代の有病率がもっと高い

・片頭痛はストレスや女性ホルモンの影響によって誘発されることが多く、チョコレートやチーズなどの特定の食品で誘発されることもある

・片頭痛は痛み止めの薬などで症状が緩和するが、発作を繰り返す場合には予防薬を使うのが効果的



<参考資料>

※1 Sakai F, Igarashi H: Prevalence of migraine in japan. a nationwide survey, Cephalalgia 1997 17(1):15-22.

※2 五十嵐久佳、坂井文彦:緊張型頭痛の疫学調査.日本頭痛学会誌 1998:25(1):17-19.

・日本神経学会:脳神経内科の主な病気 頭痛

https://www.neurology-jp.org/public/disease/zutsu.html

(2024年6月14日閲覧)

・日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会監・「頭痛の診療ガイドライン」作成委員会編:頭痛の診療ガイドライン2021

https://www.jhsnet.net/pdf/guideline_2021.pdf

(2024年6月14日閲覧)

・MSDマニュアル家庭版:頭痛

https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/09-%E8%84%B3%E3%80%81%E8%84%8A%E9%AB%84%E3%80%81%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E9%A0%AD%E7%97%9B

(2024年6月14日閲覧)

・菊井祥二、竹島多賀夫:脳画像検査からみた片頭痛の病態生理~片頭痛慢性化と鉄沈着~.日本頭痛学会誌,48:142-146,2021.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjho/48/1/48_142/_pdf

(2024年6月14日閲覧)

 



宮崎滋(みやざき しげる)

宮崎滋
(みやざき しげる)

公益財団法人結核予防会総合健診推進センター所長
https://www.ichiken.org/
東京医科歯科大学卒業後、都立墨東病院、東京逓信病院等勤務を経て、2004年に東京医科歯科大学臨床教授に就任。以降、東京逓信病院副院長、新山手病院生活習慣病センター長を歴任し、2015年より現職。日本医学会評議員をはじめ、日本内科学会、日本肥満学会(名誉会員)、日本糖尿病学会(功労評議員)、日本生活習慣病予防協会(理事長)、日本肥満症予防協会(副理事長)などを務めている。