女性のめまい〜ホルモンとの関連と生活習慣
めまいには、さまざまな症状、原因があります。なかには大きな病気が隠れていることもありますが、診察や検査で異常がみつからないこともあります。はっきりとした原因がない、いわゆる不定愁訴としてのめまいは、女性ホルモンや生活習慣、ストレスなどが影響していることがあります。
めまいの原因と症状
厚生労働省の「2019年国民生活基礎調査」によると、めまいの自覚症状がある人は、約267万人で、男性約76万人に対し、女性は約190万人と、女性が2倍以上多くなっています※1。
めまいはさまざまな病気の症状として表れ、なかには脳卒中や心筋梗塞の場合もあります。そのほかにも高血圧症や脱水症、起立性低血圧や熱中症、首が原因の頚性めまい、心身のストレスなどの原因があげられます。
めまいの多くは「耳」で起こる
めまいの症状には大きくわけて3種類あります。まわりが動いているように見えたり、自分が回転しているように見えるめまいを回転性めまいと、足元がふわふわと不安定になる感じがしたり、立ちくらみがしたりする浮動性めまい、目の前がまっくらになって立ちくらみを起こしたり、立ちくらみがする失神性めまいです。
回転性のめまいの多くは耳の障害によるもので、乗り物酔いに似ています。吐き気や嘔吐を伴うこともあり、耳鳴りがすることもあります。浮動性めまいは徐々に症状が出ることが多く、フワフワと揺れるような感じがしたり、頭痛、しびれなどの症状が起こることがあります。失神性めまいは血圧が急激に変動することで起こるもので、一時的な脳の酸素不足によって起こります。
もっとも多いのは耳が原因のものです。耳の奥(内耳)は身体のバランスを保つ機能があります。ここに何らかの異常が起こることでバランスを保てなくなり、めまい症状が起こります。緊急性が高いのは、脳が原因のめまいです。脳に異常が起こることでめまいが起こるもので、意識障害や言語障害(ろれつが回らない)、手足に麻痺が出るなどの症状を伴います。この場合はできるだけ早く医療機関で治療を受ける必要があります。
このほか、脳に送られる血液が一時期に減少して起こる失神性めまいは、高血圧や低血圧(急に立ち上がったときに血圧が低下する起立性低血圧)、貧血、低血糖などが原因となります。
めまいを起こす女性は男性の約2倍
めまいは貧血の症状のひとつでもあり、女性は生理による出血で貧血を起こしやすいことがその理由のひとつと考えられます。最近はホルモン(エストロゲン)とめまい症状の関連も指摘されています。
女性ホルモンとめまいの関係
女性ホルモンは、ライフステージを通じて女性の心身に大きく影響します。とくにめまいとの関連では、更年期障害の症状として起こるものが多いといわれています。
更年期を迎え、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が低下すると、血流障害が起こりやすくなることで、めまいが生じると考えられています。ただし、更年期のさまざまな不定愁訴には個人差があり、必ずしも更年期になってめまい症状が起こるようになるというわけではありません。
女性ホルモンの影響で出る症状はめまいに限らず、個人差が大きいため、周囲の人にはわかりにくいものです。またストレスや睡眠不足、運動不足などの生活習慣が自律神経の乱れの原因となり、めまいの発症に関わっているともいわれています。また、加齢による機能低下もめまいの原因になると考えられます。
隠れた病気がないかを検査することが重要
女性は、生理に伴うさまざまな不定愁訴を経験している人も多く、めまいが起きても軽いものですぐに治まってしまうと、そのまま放置してしまうこともあります。しかし、めまいを繰り返す場合には、原因となっている病気がないかどうかを確認することが重要です。もし病気が隠れていた場合には、その治療を行うことで改善が期待できるためです。
とくに女性に多いのが貧血です。女性は生理による出血で鉄が失われます。鉄分が不足することで発症する鉄欠乏性貧血は、普段の食事に気をつけるだけでは改善が難しく、鉄剤による治療が必要になります。治療を受けることで貧血に伴うめまい症状の改善も期待できます。
短時間に回復するめまいは良性発作性頭位めまいかも
また、数秒から数十秒の短い時間めまいが起こり、すぐに回復する場合には、良性発作性頭位めまいという耳の異常による病気の可能性もあります。良性発作性頭位めまいは、めまい患者に多い病気で、これは医師の指示のもとに体操を行うことで改善が見込めます。そのほか、耳の病気でつらいめまい症状が起こることもあります。耳鼻咽喉科を受診してめまいを起こす病気がないかどうかを診断してもらい、治療を受けることが重要です。
めまいのリスクを軽減するには
めまいは、多くの人が一度は経験する症状のため、「いつものこと」と見過ごしがちです。なかにははっきりとした原因がわからないこともありますが、頻繁にめまいが起こるようであれば、病気の可能性を疑って一度検査を受けましょう。生理などに伴う貧血の場合は、貧血の治療を行うことでめまい症状は軽減します。
更年期などの不定愁訴によるめまいの場合、ホルモン補充療法(HRT)や漢方薬による治療でめまいの軽減が期待できます。
また、めまい症状自体は大きな病気が隠れていなくても、ふらついて転倒し、大きなケガにつながることもあるため、急に強いめまいが起きた場合には、横になって楽な姿勢をとりましょう。
めまいを予防するには
めまいは睡眠不足や運動不足、ストレスによっても起こります。規則正しい生活を送り、定期的に運動をすることでめまいの頻度が減ったり、軽減したりすることもあるため、まずは自分の生活を振り返ってみましょう。
女性の場合、貧血にも注意が必要です。鉄は多くが午前中に使われるため、朝食や昼食は鉄分が多いレバーや牛もも肉、カツオやまぐろなどの赤身などを積極的に摂ることで貧血予防になります。
睡眠不足もめまいの原因になることがあります。眠りが浅く疲れが取れない、眠れないという人は、医師に相談しましょう。就寝前にリラックスできる時間を持つことで入眠しやすくするなどの工夫も大切です。
ここがポイント!
- ・めまい症状がある女性は男性の約2倍にのぼる
- ・女性は生理に伴うさまざまな不定愁訴のなかでめまいを経験している人も多く、生理に伴う貧血が隠れている可能性も
- ・めまい症状の原因に病気が隠れていないか、医療機関で診察を受けることが重要
- ・急に強いめまいが起きた場合には、横になって楽な姿勢をとるようにする
<引用・参考資料>
※ 1 厚生労働省:2019年国民生活基礎調査の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/14.pdf (2022年11月15日閲覧)
日本神経学会:脳神経内科の主な病気 (症状編)めまい
https://www.neurology-jp.org/public/disease/memai_detail.html (2022年11月15日閲覧)
日本女性心身医学会:女性の病気について 女性とめまい
https://www.jspog.com/general/details_46.html (2022年11月15日閲覧)
女性の健康推進室ヘルスケアラボ:めまい・耳鳴り
https://w-health.jp/climacterium_trouble/dizzy/ (2022年11月15日閲覧)
日本女性医学学会:めまい 耳鳴り
https://www.jmwh.jp/n-yokuaru2-meai.html (2022年11月15日閲覧)
吉丸真澄
(よしまる ますみ)
吉丸女性ヘルスケアクリニック院長
https://yoshimaru-womens.com/
金沢大学医学部卒業後、国立病院機構東京医療センター、東京歯科大学市川総合病院に勤務。2012年に東京歯科大学市川総合病院産婦人科助教に就任。2020年に吉丸女性ヘルスクリニックを開業。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医、日本抗加齢医学会認定抗加齢専門医、日本医師会認定健康スポーツ医、NR・サプリメントアドバイザー