食事と運動の「両立」がポイント! 効果的なダイエットと健康な身体づくり

食事と運動の「両立」がポイント!
効果的なダイエットと健康な身体づくり

この1年半ほどよく耳にするようになった「コロナ太り」という言葉。ステイホームやテレワークで家にいる時間が長くなると、どうしても運動不足になったり、外出自粛などのストレスで食べすぎたりしがちです。みなさんのなかにも「最近太ってきたからダイエットしなきゃ!」と思っている人は多いのではないでしょうか。
そんなダイエットや健康づくりに欠かせないのが「食事制限」と「運動」です。実はこの2つ、どちらか一方だけでは不十分なのです。食事制限と運動を「両立」することで初めて真価を発揮します。正しい知識を身につけ、効果的なダイエットで健康なこころと身体を取り戻しましょう。

太るとこんな危険が!ダイエットの前に生活習慣を改善

ダイエットは、ただ見た目の美しさだけのためだけでなく、病気の予防にもつながります。つまり、自分の未来への投資のようなもの。では、肥満にはどんな病気の危険があるのでしょうか。

私たちの身体は、消費したエネルギーよりも摂取したエネルギーが多いと、余った分を脂肪として蓄えます。こうした脂肪の蓄積が長く続いた結果が「肥満」です。肥満は「体脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態」と定義されており、過剰であるかどうかの判断には国際基準であるBMIが使われます。BMIというのは、体重と身長から算出される「肥満度」のことです。

【BMIの求め方】
BMI=体重(kg)÷身長(m)の2乗

日本肥満学会の基準では、BMI22がもっとも病気になりにくい「標準体重」、25以上が「肥満」、35を超えると、ただちに治療が必要な「高度肥満」と判定されます。

肥満はなぜ悪いのか?

肥満は脂肪がつく場所によって、大きく「皮下脂肪型」と「内臓脂肪型」にわかれます。このなかでとくに注意が必要なのが内臓脂肪型です。内臓脂肪型肥満は糖尿病、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症・痛風、心筋梗塞、脳梗塞、脂肪肝、月経異常・不妊など生活習慣病をはじめとするさまざまな病気のもとになることがわかっています。

肥満のタイプを診断するにはCT検査などを行う必要がありますが、自分自身で判断する場合は、腹囲がひとつの目安になります。一般的に成人男性であれば85cm以上、成人女性の場合は90cm以上で内臓脂肪型肥満の可能性が高いと考えられます。

これに対し、皮下脂肪型肥満は重篤な病気になる危険性の少ない肥満です。しかし、肥満状態が長期間続くと、足の関節や股関節に負担がかかり炎症などの原因になり、睡眠時無呼吸症候群や月経異常・不妊、乳がんなどの病気になる可能性も高まるといわれています。

肥満は、見た目が悪くなるだけでなく、健康に重大な悪影響を与えます。食べすぎや運動不足の人は、今日から生活習慣を改めましょう。

食事制限だけのダイエットはこんなに損

生活習慣の乱れが原因の肥満や病気は、薬で改善しても、生活習慣を変えなければ高いリスクを抱えたままになってしまいます。生活習慣のなかでも摂取エネルギーを抑える「食事制限」と消費エネルギーを増やす「運動」の両立は欠かせません。

ときどき「運動は大変だから食事制限だけやる」という人がいますが、それでは満足のいく結果が得られないばかりか、場合によっては健康を害することにもつながるため注意が必要です。その理由には次のようなものがあります。

やせにくい身体になる

人間の消費エネルギーには、大きくわけて、基礎代謝量、食事誘発性熱産生、身体活動量の3つがあります。

基礎代謝量 息をする、心臓を動かす、脳が考えるなど、生命活動を維持するために必要なエネルギー量のこと。全消費エネルギーの約6割を占める
食事誘発性熱産生 食事の消化に使われるエネルギー量。食事量に比例するが、一般的に全消費エネルギーの約1割にあたる
身体活動量 身体を動かすときに消費するエネルギー量。運動量によって変動する。
全消費エネルギーにおける割合は約3割を占める

運動をせず、食事制限ばかり行うと、脂肪とともに筋肉も落ちてしまい、基礎代謝量が低下します。その結果、どんどんやせにくい身体になってしまうのです。そのほかにも次のようなデメリットがあります。

栄養不良に陥る 運動をしない代わりに過度に食事制限を行うと、エネルギーだけでなく身体の維持に必要なビタミンやミネラルといった栄養素の不足にもつながる
継続が難しい 肥満の人は、「食べることが好き」な人が多い。そういった人にとって「食べたいものが食べられない」というストレスはとても大きいもの。無理な食事制限を続けると、どんどんストレスがたまってしまい、ある日突然がまんの限界を迎えてしまうことがある。ダイエットを継続するには、食事制限もほどほどが大事
病気が改善しないケースも 肥満の解消にあわせて生活習慣病の改善を目指す場合は、食事制限だけでは不十分なケースが多い。運動には、単にエネルギーを消費するだけでなく、血圧を上昇させる物質の産生を抑えたり、血圧を下げる物質の産生をうながしたりする効果がある。たとえば高血圧の人の場合、塩分や摂取エネルギー制限と適度な運動を両立させることで、より効果が出やすくなる

食事と運動の「両立」が相乗効果を生む

30日で1kgの脂肪(7,200kcalに相当)を減らすためには、1日あたり240kcalのエネルギーを余分に消費しなければなりません。この240kcalに相当する食事量と運動量(体重70kgの場合)は次の通りです。

食事(240kcal相当) ご飯茶わん1杯弱、たいやき1枚強、ビール中ジョッキ1杯強、植物油大さじ2
運動(240kcal相当) ウォーキング約60分、ジョギング約30分、水泳(クロール)約30分

食事と運動を組み合わせるメリット

単に体重を減らすだけであれば食事療法のほうが楽に感じるかもしれません。しかし、健康的にやせるのであれば、食事と運動を組み合わせることが重要です。

やせやすい身体になる 食事制限だけの場合とは反対に、運動によって筋肉がつけば、基礎代謝が増えてやせやすい身体になる。やせやすい身体になると、ダイエットも順調に進み、身体が軽くなることでさらに運動がしやすくなる好循環が生まれる
継続しやすい 食事制限によるストレスを運動で解消することができるため、ダイエットを継続しやすくなる。また、同じ240kcalを減らすのでも、食事(200kcal)+運動(40kcal)のように組み合わせて行うことで、無理なく継続できる
病気の治療にも有効 食事療法と運動療法の両立は、肥満解消に役立つだけでなく、肥満と関係する糖尿病や高血圧、高尿酸血症・痛風などの治療としても効果的である

運動のやり方は、筋肉を鍛える無酸素運動と脂肪を燃焼させる有酸素運動をバランスよく組み合わせることが大切だといわれています。健康のためにも、スマートで美しい自分を取り戻すためにも、目標を定め、食事制限と運動をうまく組み合わせながら実現していきましょう。

ここがポイント!

  • 生活習慣の乱れは、肥満や病気のリスクを高める
  • 肥満や病気の改善には食事制限だけでは不十分
  • 食事制限と運動の両立が大切

参考資料

肥満症診療ガイドライン2016
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/107/2/107_262/_pdf/-char/en
厚生労働省 e-ヘルスネット 肥満と健康
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-001.html
厚生労働省 e-ヘルスネット BMI
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-002.html
厚生労働省 e-ヘルスネット 身体活動とエネルギー代謝
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-02-003.html
日本食品標準成分表
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365419.htm

宮崎滋(みやざき しげる)

宮崎滋
(みやざき しげる)

公益財団法人結核予防会総合健診推進センター所長
https://www.ichiken.org/
東京医科歯科大学卒業後、都立墨東病院、東京逓信病院等勤務を経て、2004年に東京医科歯科大学臨床教授に就任。以降、東京逓信病院副院長、新山手病院生活習慣病センター長を歴任し、2015年より現職。日本医学会評議員をはじめ、日本内科学会、日本肥満学会(名誉会員)、日本糖尿病学会(功労評議員)、日本生活習慣病予防協会(理事長)、日本肥満症予防協会(副理事長)などを務めている。