続けやすく、リバウンドしにくいダイエット中の食事のとり方とは

続けやすく、リバウンドしにくい
ダイエット中の食事のとり方とは

やせるのはあんなに大変なのに、元の体型、体重に戻るのは簡単……。「今度こそは」と、強い決意でダイエットを始め、2カ月でマイナス3kgを達成!…のはずが、ちょっとした気の緩みから数日でリバウンドしてしまった経験がある人も多いのではないでしょうか。
そんなときは、つい自分のこころの弱さを責めてしまうものです。しかし、リバウンドの原因はあなたのこころではなく、ダイエットの方法にあるのかもしれません。ダイエットは、食事制限のやり方によって「続けやすさ」や「リバウンドのしやすさ」に大きな差があります。
今回は、人気の糖質制限ダイエットを中心に「ダイエット中の食事のとり方」について見てみましょう。

なぜ糖質制限ダイエットは続かないのか

なぜ糖質制限ダイエットは続かないのか

糖質制限ダイエットとは、糖質を多く含むごはんやパン、いも類などを減らし、その分、肉や大豆などのたんぱく質と脂質をしっかりと食べることで、摂取する糖質量を減らすダイエットです。

摂取エネルギーをあまり気にしなくてよいことや、比較的早く体重が減ることから、爆発的な人気を誇っています。しかし、そんな糖質制限ダイエットには「リバウンドしやすい」という落とし穴があるのを知っていますか?その理由は主に次の2つです。

「水分が抜けた」のを「脂肪が減った」と勘違いしてしまう

糖質制限ダイエットは、即効性があることで知られています。しかし、勘違いしてはいけないのは、それは「体重が減る」のであって「脂肪が減る」のではないということです。

最初の数日から数週は、主に糖と結びついていた水分が抜けて体重が減少するだけで、しっかり脂肪が分解されるようになるには、数週間から数カ月かかるといわれています。そのため、「2〜3kg体重が落ちたから」と、すぐにダイエットをやめてしまうと、あっという間にリバウンドしてしまうのです。

やせにくく太りやすい身体になる

やせにくく太りやすい身体になる

糖質制限ダイエットがリバウンドしやすいもうひとつの理由が「やせにくく太りやすい身体になってしまうから」です。

「やせにくくなる」とは、「基礎代謝が低下する」という意味です。糖質制限ダイエットでは、糖の摂取量を少なくすることで、体内の脂質やたんぱく質のエネルギー分解をうながします。それがダイエットにつながるのですが、糖質制限で問題となるのは、脂肪と同時に筋肉も分解されてしまうことです。筋肉量が減少することで基礎代謝が減り、やせにくい身体になってしまいます。

「太りやすい身体になる」のは、身体が飢餓状態になって糖の吸収に貪欲になってしまうことが原因です。糖質制限をしている間、身体は食事で得られた少ない糖質を吸収しようと必死になります。そこへ糖質制限ダイエットをやめて糖質をとるようになると、“いまだ!”と、身体が糖をどんどん吸収してしまうのです。

ダイエットが成功する人、しない人

せっかく食事制限をするのであれば、続けやすくリバウンドしにくい方法を選びたいものです。ダイエットが成功する人としない人にはどんな違いがあるのでしょうか。まずは、ダイエットの失敗やリバウンドを引き起こす原因を知ることがポイントとなります。

過度な食事制限

急激に食事量を減らすと、ダイエットが長続きしないばかりか、ダイエットしにくい身体をつくることにつながります。その原因の1つが「ホメオスタシス」です。ホメオスタシスというのは、飢餓状態から身体を守るために人間に備わっている機能のことです。摂取エネルギーが極端に少ない状態が続くと、人間の身体は消費エネルギーを抑えて省エネモードに入るため、やせにくくなります。

さらに、省エネモードのときに食事量を戻すと、身体は次の飢餓に備えて栄養を蓄えようとし、リバウンドするのです。また過度な食事制限をすると、筋肉が減少して基礎代謝が低下したり、脂肪の燃焼に必要な栄養素が不足することで、体重が落ちにくくなったりします。

ストレスでリバウンド

ダイエットの失敗やリバウンドには「こころ」も大きくかかわります。食べることが好きな人にとって、食事制限は大きなストレスになります。ストレスを感じると、こころを安定させたり食欲を抑制したりするセロトニンという物質の働きが悪くなります。その結果、食べられないストレスが食欲のコントロールをむずかしくし、さらに強いストレスになる……、という悪循環を生み、ダイエットの失敗やリバウンドにつながってしまいます。

ダイエットで大事なのは“食事制限”のやり方

これまで見てきたように、ダイエットを長く続け、リバウンドを防ぐには、できるだけ「過剰にならず、ストレスを感じにくい」食事制限が大切です。次のような点に注意しながら、無理なく続けましょう。

目標設定を緩やかにする 1カ月の減量目標を高く設定すると、それだけ無理な食事制限が必要になる。通常3〜6カ月に体重の3%減が理想といわれているが、ダイエットがストレスになっているなら、もっと目標設定を少なくしてもよい。少しずつでも着実に減らしていくことが大切
バランスのよい食生活を心がける 三大栄養素であるたんぱく質、脂質、炭水化物はもちろん、ビタミンやミネラルも人間が生きて行くために必要な重要な栄養素。極端な糖質制限を含め、偏りのある食事制限は逆効果になる。栄養素をバランスよくとることが健康的なダイエットになる
できるだけ3食にわけて食べる ダイエット中の1日の食事回数が少なくなると、食事と食事の間隔が長くなる。すると、身体が栄養を欲する飢餓状態を生み出しやすくなるので注意が必要だ。少ない食事回数でたくさん食べるよりも、しっかり3食にわけて食べるのがおすすめだ
夕食は控えめに 3食をどのようなバランスで食べるかも重要。なかでも「夕食を早い時間に控えめに食べる」ことを心がけよう。夜間は、消費エネルギーが少なく、体内に脂肪をため込むBMAL-1という時計遺伝子のたんぱく質が多くなる。遅い時間に夕食を食べる、夕食で多くのエネルギーをとる食生活は太りやすくなる。遅くとも夜9時までに、糖質や脂質の少ないものを食べるのが理想だ。
夜の空腹を避けるためには、「脂身の少ない肉や魚を食べる」「きのこや豆腐などボリュームのある食材を活用する」「刺激やかみごたえのある食材を使う」などの工夫が必要

ここがポイント!

  • 糖質制限ダイエットはリバウンドの可能性が高い
  • ダイエット失敗やリバウンドの原因は「過度な食事制限」と「ストレス」
  • ポイントを押さえながら無理のない食事制限を心がけましょう

参考資料

厚生労働省:e-ヘルスネット「ダイエット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-090.html
厚生労働省:e-ヘルスネット「肥満と健康」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-001.html
日本肥満学会:肥満症サマーセミナーQ&A
http://www.jasso.or.jp/contents/magazine/qa.html

宮崎滋(みやざき しげる)

宮崎滋
(みやざき しげる)

公益財団法人結核予防会総合健診推進センター所長
https://www.ichiken.org/
東京医科歯科大学卒業後、都立墨東病院、東京逓信病院等勤務を経て、2004年に東京医科歯科大学臨床教授に就任。以降、東京逓信病院副院長、新山手病院生活習慣病センター長を歴任し、2015年より現職。日本医学会評議員をはじめ、日本内科学会、日本肥満学会(名誉会員)、日本糖尿病学会(功労評議員)、日本生活習慣病予防協会(理事長)、日本肥満症予防協会(副理事長)などを務めている。