生命保険の特約でよくみかける「三大疾病」とは?対象となる病気に共通する予防対策

生命保険の特約でよくみかける「三大疾病」とは?
対象となる病気に共通する予防対策

生命保険のCMなどで「三大疾病」という言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。一般的に三大疾病といえば、日本人の死亡原因の約半数を占める「がん」「心疾患」「脳血管疾患」のこと。厚生労働省が発表した「令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によれば、年間70万人近い日本人が三大疾病のいずれかで亡くなるとされています。
今回は、そうした「身近なこわい病気」である三大疾病について、基本的な知識と予防対策を解説します。正しく病気を理解し、健康管理に役立てましょう。
※生命保険などでは「がん」「急性心筋梗塞」「脳卒中」を三大疾病と呼ぶこともあります。

三大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患)は早期発見が重要

「がん」「心疾患」「脳血管疾患」とは、細かくいえば病名ではなく「同じ特徴を持つ病気の総称」です。がんもさまざまな部位に起こるもので、心疾患は「心臓のさまざまな病気」、脳血管疾患は「脳血管に起こる病気」と考えればよいでしょう。まずはそれぞれがどんな特徴を持っているのか、どのような病気が含まれるのかを見ていきましょう。

がんとは?

がんは、悪性腫瘍(あくせいしゅよう)とも呼ばれる通り、「悪性を示す腫瘍」の総称です。
腫瘍とは、「何らかの原因で異常に増殖した細胞のかたまり」のことで、ホクロやイボなども腫瘍に含まれます。腫瘍には良性と悪性があり、ホクロやイボのように特定の部位でゆっくりと大きくなるものを良性腫瘍、成長スピードが速く、周辺組織に広がったり、ほかの部位に転移したりするものを悪性腫瘍、すなわち「がん」と呼びます。

がんには、大きく「固形がん」と「血液がん」の2種類があります(表1)。

表1 がんの種類と特徴

がんの種類 特徴 主ながん
固形がん 上皮細胞がん 身体や臓器の表面、消化管の粘膜などに悪性のかたまりができる 胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮がんなど
非上皮細胞がん 骨や筋肉をつくる細胞にできる 骨肉腫や軟骨肉腫など
血液がん 血液中の細胞が「がん化」する 白血病、悪性リンパ種、多発性骨髄腫など

心疾患とは?

私たちの心臓は、24時間365日休むことなく働き、全身に血液を送り続けています。そのなかで「心臓に何らかの障害が発生し、血液の流れが悪くなる病気」の総称を心疾患といいます。
主な心疾患には、次のようなものがあげられます。

  • 心臓を動かす刺激(電気信号)の流れに異常が出る:不整脈
  • 心臓の筋肉に異常が生じる:心筋症、心筋炎
  • 心臓の弁が正常に機能しなくなる:心臓弁膜症
  • 心臓に酸素や栄養を送る冠動脈が詰まり、心臓が酸欠状態になる:心筋梗塞、狭心症

心筋梗塞のなかでも発症から48時間以内のものを急性心筋梗塞といいます。心臓の病気のなかでもとくに致死率が高く、注意が必要です。

脳血管疾患とは?

脳血管疾患は、その名のとおり「脳の血管に障害が発生する病気」の総称です。
がんや心疾患と同様に、脳血管疾患にもいろいろな病気が含まれますが、代表的なのが脳卒中です。脳卒中とは、脳の血管が詰まったり破れたりして麻痺や言語障害、意識障害などを引き起こす病気のことです。脳の血管が詰まるタイプには脳梗塞が、脳の血管が破れて出血するタイプには、脳出血やくも膜下出血があります。

自覚症状がなく進行する「がん」「心疾患」「脳血管疾患」

三大疾病は、1958年から2010年の約50年間、日本人の死亡原因トップ3を独占してきました。2011年以降は、高齢化の影響で老衰や肺炎が3位に入ってきますが、現在でも三大疾病は、日本人の生命を脅かす非常にこわい病気であることに変わりありません(図)。

では、医療が日々進化している現代において、なぜ三大疾病による死亡は防ぐことができないのでしょうか。それぞれの病気が持つ「こわさ」はどこにあるのでしょう。

図 性・年齢階級別にみた主な死因の構成割合(令和2年)

図 性・年齢階級別にみた主な死因の構成割合(令和2年)

(厚生労働省:令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況より一部引用※1

がんはなぜこわいのか?

がんのこわさは、「周辺組織に広がる」「全身に転移する」という特性にあります。
医療の進歩によって、がんは「死の病」ではなく、治すことができる病気になってきました。しかしそれは、がんが特定の臓器のなかにとどまっており、残らず切除したり死滅させたりできる場合のことです。がんが進行し、ほかの臓器に転移した場合は、がんを切除してもまた再発する可能性が高く、完治が難しくなります。

さらに、こうしたがんの危険性に拍車をかけるのが、自覚症状の少なさです。ほぼすべてのがんは、初期段階ではほとんど自覚症状がありません。そのため「気づいたときには進行していた」というケースが多いのです。

心疾患はなぜこわいのか?

心臓は、私たちの生命を支える重要な臓器です。そのため、心機能の障害は死に直結する危険性があります。とくに急性心筋梗塞でそのリスクが高く、病院に搬送される前に突然死するケースも少なくありません。さらに、命が助かった場合でも、重篤な後遺症が残ることがあります。

急性心筋梗塞の最大の原因は動脈硬化です。しかし、初期のがんと同様に、動脈硬化には自覚症状がありません。そのため、知らない間に進行し、急性心筋梗塞を引き起こしてしまうのです。

脳血管疾患はなぜこわいのか?

脳血管疾患、とくに脳卒中のこわさは急性心筋梗塞によく似ています。突然死する場合もあり、手足に麻痺などの後遺症が残る可能性が高い病気です。

主な原因も急性心筋梗塞と同じく動脈硬化なので、自覚症状がないという危険性も共通しています。

動脈硬化を防ぐ生活習慣が三大疾病の予防に

三大疾病に共通する予防法は、「生活習慣の改善」と「定期健診(検診)」です。

生活習慣の改善

急性心筋梗塞や脳卒中から生命を守るには、なにより発症を防ぐことが重要です。そのためには、動脈硬化の進行を防ぐかが鍵となります。

動脈硬化は、喫煙や高コレステロール、高血圧、肥満、高血糖などの危険因子が重なって発症・重症化する生活習慣病です。高血圧症や脂質異常症、糖尿病などの病気がある人は、その治療を正しく行うことはもちろん、今そうした病気がなくても「禁煙」「バランスのよい食事」「適度な運動習慣」「ストレス解消」などの生活習慣を心がけるようにしましょう。

生活習慣のなかには「喫煙と肺がん」のようにがんの発症と関係するものも多いため、がん予防の意味でも生活習慣の改善が大切です。

定期健診(検診)

正しい生活習慣を心がけていても、三大疾病を完全に予防できるわけではありません。だからこそ自分の身体の状態を正しく知ることが重要です。

できるだけ早く病気を発見して治療をすることが身体への負担も少なく、治療効果も高くなります。効率的に日々の健康管理を行うためにも、定期的に健康診断や検診を受けることをおすすめします。

ここがポイント!

  • 三大疾病とは「がん」「心疾患」「脳血管疾患」のことである
  • 危険な病気である反面、発症・進行するまで自覚症状がほとんどない
  • 三大疾病の予防には「生活習慣の改善」と「定期健診(検診)」が大切

引用・参考資料

  • ※1厚生労働省:令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai20/dl/kekka.pdf

国立がん研究センター:がん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/knowledge/basic/index.html
国立循環器病研究センター:循環病情報サービス
http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/target-pub/heart.html
厚生労働省 e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp

宮崎滋(みやざき しげる)

宮崎滋
(みやざき しげる)

公益財団法人結核予防会総合健診推進センター所長
https://www.ichiken.org/
東京医科歯科大学卒業後、都立墨東病院、東京逓信病院等勤務を経て、2004年に東京医科歯科大学臨床教授に就任。以降、東京逓信病院副院長、新山手病院生活習慣病センター長を歴任し、2015年より現職。日本医学会評議員をはじめ、日本内科学会、日本肥満学会(名誉会員)、日本糖尿病学会(功労評議員)、日本生活習慣病予防協会(理事長)、日本肥満症予防協会(副理事長)などを務めている。