つらい生理痛は「子宮筋腫」が原因かもしれません

つらい生理痛は「子宮筋腫」が原因かもしれません

もしもの時のための保険を備えませんか?

生理(月経)の下腹部の痛みは、多くの女性が経験しているのではないでしょうか。生理痛は、下半身が重だるく感じられるだけの人から立ち上がるのもつらい人まで、痛みの強さには個人差があり、年齢とともに変化することもめずらしくありません。ただし、急に痛みが強くなった場合には、子宮筋腫などの病気が隠れていることがあります。

あなたの生理痛の症状をチェックしましょう

女性の生理周期は、通常28〜30日を1サイクルに、生理が始まってから約14日目に排卵が起こります。生理が始まると一般的には3〜7日の出血があり、血液の量は1回の生理につき、20〜140mLといわれています。

しかし、1カ月に何回も生理がきたり、逆に1サイクルが40日以上もあったりする場合は排卵機能や女性ホルモンのバランスが乱れている可能性があります。また、出血は多すぎても少なすぎても何らかの病気が隠れている可能性があります。「いつもと違う」と感じたときには、婦人科の受診をおすすめします。

【こんなときは婦人科を受診しましょう】

  • 1カ月に何回も生理がある
  • 生理が8日以上続く
  • 生理から次の生理まで40日以上ある
  • 出血量が多く(150mL以上)、夜用ナプキンが2時間持たない
  • レバー状の大きなかたまりが出ることがある

生理のしくみとは?

子宮は赤ちゃんを育てる空間です。ここに受精した受精卵がうまく着床するように、毎月ふかふかのベッドのようなものがつくられます。これを子宮内膜といいます。

しかし、受精卵が着床(妊娠)しなかった場合は、子宮内膜がはがれ落ちて血液と一緒に体外に排出されます。次の妊娠に備えて、一度子宮のなかを掃除するようなイメージです。はがれ落ちた子宮内膜と血液が腟を通って排出されたものが生理です。この周期は28〜30日で繰り返されます。

ひどい生理痛が起きたときの対処法

子宮は、はがれ落ちた子宮内膜を血液と一緒に体外に出そうとして収縮します。この収縮を痛みとして感じるのが生理痛です。生理による下腹部や腰の痛み、重だるさは個人差がありますが、痛みが強くなる原因もさまざまです(表1)。

表1 生理痛の主な原因

プロスタグランジンの分泌量が多い 子宮の収縮をうながすプロスタグランジンが痛みの原因物質。プロスタグランジンの分泌量が多い人は、生理痛も強くなる
ホルモンバランスの乱れやストレスによる冷え ホルモンバランスの崩れやストレスなどで冷えがあり、血行が悪い人は、プロスタグランジンが骨盤周辺にとどまりやすく、痛みが長く続く
若い女性や出産経験がない女性 子宮の出口が狭いため、血液を膣から押し出すときに痛みを感じやすい

生理痛のときは薬を飲むべき?

痛みをやわらげる鎮痛薬は、「飲むとくせになる」「だんだん効かなくなって薬の量が増える」などと不安に感じる人も少なくありません。しかし、1カ月のうち生理痛が強い数日間の服用なら心配ありません。痛みをがまんすることで生活の質(QOL)が低下するため、痛みが出そうだと感じたときには、無理せず鎮痛薬を飲みましょう。

痛みが強く、日常生活に支障をきたしている場合には低用量ピルも選択肢のひとつです。月経困難症や子宮内膜症の診断を受けている人なら保険適用になります。また、自費で低用量ピルを服用することもできます。低用量ピルに比べてエストロゲンの量が少なく、吐き気や頭痛などの副作用が抑えられる超低用量ピルもあります。

日常生活で生理痛を緩和する工夫

生理中は入浴を避け、シャワー浴で済ませる人もいますが、清潔なお湯であれば感染症の心配はなく、水圧で血液は湯船に流れ出ることもありません。ゆっくりと湯船につかって身体を温めることが生理痛の緩和に役立ちます。

また、身体を締めつけない服装にする、軽くストレッチをするなど、血行をよくすることで痛みが軽くなることが知られています。

生理痛がひどくなったら「子宮筋腫」の可能性も

生理の出血量が増えたり、痛みが強くなったりした場合は、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が隠れていることがあります(表2)。

表2 子宮内膜症と子宮筋腫の特徴

子宮内膜症 子宮内膜が子宮の外で増えてしまう病気で、20〜30代に多く発生する。鎮痛薬が効かないほどの痛みが起こることもある。不妊の原因にもなるため、早めに治療を受けることが大切
子宮筋腫 子宮にできる良性の腫瘍で、30歳以上の女性の20〜30%にみられる。生理痛のほか貧血、1回の生理の期間が長い、出血量が多いなどの症状がみられる。腫瘍が大きくなると周囲の臓器を圧迫して頻尿や排尿困難、便秘、腰痛などの症状が起こる

痛み止めを飲んでも効果が感じられない、仕事や家事に支障をきたすほど痛みが強い、以前よりも痛みが強くなっている、生理のとき以外にもおなかや腰が痛いなどの症状がある場合は婦人科を受診しましょう。

生理痛のほかに頻尿や便秘などの症状を伴う「子宮筋腫」

子宮筋腫はできる場所や大きさによっても症状が異なります。次のような特徴があります(図1、表3)。

図1 子宮筋腫ができやすい場所

図1 子宮筋腫ができやすい場所

表3 子宮筋腫の種類と症状の特徴

子宮筋腫の種類 できる場所 症状の特徴など
子宮の内側(粘膜下筋腫) 子宮の内壁を覆う子宮内膜下にできる 生理痛や出血量の増加、生理期間が長くなるなどの症状が出る
子宮の筋肉のなか(筋層内筋腫) 子宮の筋肉のなかにできるもので、子宮筋腫の半分以上を占める 小さいうちは症状も痛みも少ないが、筋腫が大きくなりやすい
子宮の外側(漿膜下筋腫) 子宮の表面を覆う漿膜の下にできる 症状は出にくいが、筋腫の根元がねじれると激痛を起こす

子宮筋腫の診断は、婦人科診察と超音波検査、必要に応じてMRI検査などを行います。子宮がんや子宮肉腫と区別するために、血液検査をする場合もあります。

年齢やライフステージに応じて治療方法を検討

子宮筋腫の治療は薬物療法と手術療法に大きくわけられます(表4)。

表4 子宮筋腫の治療法

治療法 特徴
①薬物療法 偽閉経療法 GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)アナログというホルモン剤を使い、筋腫を成長させる女性ホルモンの分泌を抑える
対症療法 鉄剤や非ステロイド性抗炎症剤などでつらい症状を和らげる
②手術療法 子宮全摘術 卵巣を残して子宮全体を摘出する
子宮筋腫核出術 筋腫の部分だけをくり抜いて摘出する。妊娠は可能だが、再発のリスクがある
子宮鏡下子宮筋腫摘出術 腟から子宮内に電気メスを入れて、子宮のなかに飛び出している粘膜下筋腫を切りとる
子宮鏡下子宮内膜焼灼術 主に出血量を抑えることを目的に、マイクロ波で子宮内膜を焼き、壊死させる
子宮動脈塞栓術(UAE) 太もものつけ根からカテーテルを入れ、子宮の血管(動脈)に流れる血液を遮断して、筋腫を小さくする方法。症状は改善されるが、合併症が出たり、妊娠しにくくなったりする可能性がある

どの治療法もメリットとデメリットがあります。治療法の選択は、筋腫の大きさや症状、部位、数、癒着の有無だけではなく、今後の妊娠の予定や年齢などもかかわってきます。医師とよく相談したうえで、検討しましょう。

参考資料

日本産科婦人科学会:産科・婦人科の病気「子宮筋腫」
http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=8
日本産婦人科腫瘍学会:子宮筋腫
https://jsgo.or.jp/public/kinshu.html
佐藤孝道・石田友彦:よくわかる最新医学 子宮筋腫.主婦の友社,2015.

吉丸真澄(よしまる ますみ)

吉丸真澄
(よしまる ますみ)

吉丸女性ヘルスケアクリニック院長
https://yoshimaru-womens.com/
金沢大学医学部卒業後、国立病院機構東京医療センター、東京歯科大学市川総合病院に勤務。2012年に東京歯科大学市川総合病院産婦人科助教に就任。2020年に吉丸女性ヘルスクリニックを開業。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医、日本抗加齢医学会認定抗加齢専門医、日本医師会認定健康スポーツ医、NR・サプリメントアドバイザー