「加齢と基礎代謝」の関係年齢とともにダイエットがうまくいかなくなったと感じる理由

「加齢と基礎代謝」の関係
年齢とともにダイエットがうまくいかなくなったと感じる理由

「昨日は食べすぎたかもしれない」「最近身体が重いと感じる」といったとき、日々の健康管理のひとつとして、身体を動かしたり、食事を減らしたりしている人が多いのではないでしょうか。しかし、若いうちはスポーツジムで汗を流す、少し甘いものを我慢する程度で、もとの体重に戻る人でも、年齢を重ねていくうちになかなか結果が出なくなったと感じることがあります。やせにくくなったと感じる人の効率的なダイエットについて紹介します。

ダイエットするなら知っておきたい基礎代謝の計算方法

基礎代謝は、身体的かつ精神的に安静した状態でのエネルギー代謝量のことで、人が生命を維持するための最低限必要なエネルギーを指します。基礎代謝量は、その基準となる年齢、性別の基礎代謝基準値×現在の体重で算出されます(表1)。

表1 参照体重における基礎代謝量(12歳以上)

性別 男性 女性
年齢 基礎代謝基準値(kcal/kg体重/日) 参照体重(kg) 基礎代謝量(kcal/日) 基礎代謝基準値(kcal/kg体重/日) 参照体重(kg) 基礎代謝量(kcal/日)
12~14 31.0 49.0 1,520 29.6 47.5 1,410
15~17 27.0 59.7 1,610 25.3 51.9 1,310
18~29 23.7 64.5 1,530 22.1 50.3 1,110
30~49 22.5 68.1 1,530 21.9 53.0 1,160
50~64 21.8 68.0 1,480 20.7 53.8 1,110
65~74 21.6 65.0 1,400 20.7 52.1 1,080
75以上 21.5 59.6 1,280 20.7 48.8 1,010

 

10代前半までは基礎代謝量が増加し、女性では12~14歳、男性では15~17歳がピークになります。それ以降は徐々に基礎代謝は減っていきます。

推定エネルギー必要量とは

人は1日中寝ていてもエネルギーを消費しています。心臓を動かしたり、胃で食べ物を消化したりするにもエネルギーは必要だからです。基礎代謝量は、こうした生きていくために最低限必要なエネルギー量であり、食事のエネルギー摂取量がこれを下回る状態を続けてしまうと人は餓死してしまいます。

 

この基礎代謝量に身体を動かすために必要なエネルギーを加えたものが、消費エネルギー量です。しかし、消費エネルギーは簡単に知ることができないため、基礎代謝量×身体活動レベルで算出する推定エネルギー必要量を用います。身体活動レベルとは、身体を動かす強度のことで、身体活動量の指標となるものです。次の3つのレベルにわかれます(表2)。
 

表2 身体活動レベル別にみた活動内容と活動時間の代表例

身体活動レベル 低い(Ⅰ) ふつう(Ⅱ) 高い(Ⅲ)
1.50(1.40~1.60) 1.75(1.60~1.90) 2.00(1.90~2.20)
日常生活の内容 生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合 座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、通勤・買い物での歩行、家事、軽いスポーツのいずれかを含む場合 移動や立位の多い仕事への従事者、あるいはスポーツ等余暇における活発な運動習慣を持っている場合
中程度の強度(3.0~5.9Mets)の身体活動の1日当たりの合計時間(時間/日) 1.65 2.06 2.53
仕事での1日当たりの合計歩行時間(時間/日) 0.25 0.54 1.00

*代表値。(  )はおよその範囲

つまり、いまの生活でやせるか太るかは推定エネルギー必要量とエネルギー摂取量のバランスで決まります。身体活動レベルを上げ、推定エネルギー必要量を増やしてもエネルギー摂取量が多いまま、つまりそれ以上に食べてしまえば、どんなに運動をがんばっていても、やせることはできません。

 

ここで、若年層と中高年のエネルギー消費量の例をみてみましょう(表3)。


表3 エネルギー消費量の例

例1)20歳 女性 体重52kg 活動レベルⅢ 男性 体重63kg 活動レベルⅢ
22.1(基礎代謝基準値)×52kg(体重)=1,149kcal(基礎代謝量)
1,149(基礎代謝量)×2.00(活動レベル)=2,298kcal(エネルギー消費量)
23.7(基礎代謝基準値)×63kg(体重)=1,493kcal(基礎代謝量)
1,493kcal(基礎代謝量)×2.00(活動レベル)=2,986kcal(基礎代謝量)
例2)40歳 女性 体重52kg 活動レベルⅡ 男性 体重63kg 活動レベルⅡ
21.9(基礎代謝基準値)×52kg(体重)=1,138kcal(基礎代謝量)
1,138(基礎代謝量)×1.75(活動レベル)=1,992kcal(エネルギー消費量)
22.5(基礎代謝基準値)×63kg(体重)=1,418kcal(基礎代謝量)
1,418kcal(基礎代謝量)×1.75(活動レベル)=2,482kcal(基礎代謝量)
例3)60歳 女性 体重52kg 活動レベルⅠ 男性 体重63kg 活動レベルⅠ
20.7(基礎代謝基準値)×52kg(体重)=1,076kcal(基礎代謝量)
1,076(基礎代謝量)×1.50(活動レベル)=1,614kcal(エネルギー消費量)
21.8(基礎代謝基準値)×63kg(体重)=1,373kcal(基礎代謝量)
1,373kcal(基礎代謝量)×1.50(活動レベル)=2,060kcal(基礎代謝量)

年齢と活動レベルの違いによってエネルギー消費量に差が出てきます。例1と例3の女性のエネルギー消費量の差は684kcalとなり、軽食1回分に近い差となります。また、運動は1.05×5.0Mets・時(時速6.4kmで歩いた場合の値)×52(kg)×2時間=546kcalとなるため、速歩で2時間歩いてもこの差を埋めることができないのです。

身体活動レベルを上げて筋肉量を増やす

ダイエットのための運動で「加齢とともに筋肉量が減少するからやせにくくなる」といわれることがありますが、筋肉量を増やす筋トレだけでは脂肪を消費しきれません。効率よくダイエットをするなら、身体活動量を増やしながらの筋トレがポイントになります。

 

筋肉のエネルギー消費は基礎代謝量の約20%を占めており、脂肪に比べて代謝量が高くなります。その他にエネルギー代謝が多いのは肝臓や脳ですが、これをトレーニングで増やすのは難しいため、筋肉量を増やす必要があるのです。

消費されないエネルギーは中性脂肪として蓄積する

エネルギー消費量に比べてエネルギー摂取量が多い生活が続くと、消費されないエネルギーは中性脂肪として脂肪細胞に蓄積されていき、体脂肪率の増加を招いて体重が増え、肥満に至ります。

 

しかし、適正な体重の人が過剰なダイエットによって消費エネルギー量よりもエネルギー摂取量が低くなりすぎるのも感染症や一部がんなどのリスクを高めるとされています。体重を落とす必要がある場合には、どちらかに偏らず、摂取エネルギー量と消費エネルギー量のバランスを見直しましょう。

筋肉量を増やして基礎代謝を上げる

筋肉量や脂肪量の測定方法には、病気の診断を行うCTやMRIなどの装置を使う方法のほか、近年は体組成の計測機能がついている体重計で調べることもできます。体組成計を使った調査報告では、男性で49~51kg程度、女性では34~35kgとなっており※1、男女問わず加齢とともに下半身の筋肉量が低下していきます。筋トレでしっかり下半身の筋肉量を増やしていくことも、将来の健康づくりに役立ちます。

筋肉量を増やして体温も上昇

筋肉量が増えると、効率よく熱をつくり出すことができるため、平均体温も上昇します。体温が低い人は病気にかかりやすいといわれていますが、筋肉量が減少している人は気温の変化に身体が対応しにくかったり、疲れやすくなってさらに身体を動かさなくなって筋肉が衰える負のスパイラルに陥ったりと、健康への影響も出てきます。

 

また、加齢や身体活動量の低下によって筋肉量が減少すると、基礎代謝が低下するだけでなく、食事誘発性熱産生も低下するといわれています。つまり、筋肉量の減少はエネルギー消費の効率を下げてしまうことにほかなりません。

 

効率よくダイエットをするなら、運動習慣や家事などで積極的に身体活動量を増やすこと、さらにそのエネルギー消費効率を高めるために筋トレを取り入れましょう。

ここがポイント!

  • 基礎代謝量と身体活動に必要なエネルギー量を加えたものが消費エネルギー量で、推定エネルギー必要量が目安となる
  • 消費エネルギー量を増やすためには、筋肉量を増やすとともに、身体活動レベルを上げることがポイント
  • 加齢とともに減少する全身の筋肉量を増やすことで将来の健康な身体づくりにも役立つ

引用・参考資料

※1 原田脩平ほか:体組成計による筋肉量・脂肪量の測定報告-性別による違いと加齢変化-.理学療法-臨床・研究・教育,25:98-102,2018.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ptcse/25/1/25_98/_pdf(2023年10月13日閲覧)

 

・日本医師会:1日に必要なカロリー 推定エネルギー必要量

https://www.med.or.jp/forest/health/eat/01.html(2023年10月13日閲覧)

・厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf(2023年10月13日閲覧)

・e-ヘルスネット:身体活動とエネルギー代謝

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-02-003.html(2023年10月13日閲覧)

・厚生労働省:食生活改善指導担当者テキスト~栄養指導・健康教育編~

https://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/pdf/info03k-04-06.pdf(2023年10月13日閲覧)

宮崎滋(みやざき しげる)

宮崎滋
(みやざき しげる)

公益財団法人結核予防会総合健診推進センター所長
https://www.ichiken.org/
東京医科歯科大学卒業後、都立墨東病院、東京逓信病院等勤務を経て、2004年に東京医科歯科大学臨床教授に就任。以降、東京逓信病院副院長、新山手病院生活習慣病センター長を歴任し、2015年より現職。日本医学会評議員をはじめ、日本内科学会、日本肥満学会(名誉会員)、日本糖尿病学会(功労評議員)、日本生活習慣病予防協会(理事長)、日本肥満症予防協会(副理事長)などを務めている。