栄養不足の髪は老け見えの原因に?ヘアケアの基本ととりたい栄養素

栄養不足の髪は老け見えの原因に?
ヘアケアの基本ととりたい栄養素

髪は、男女問わず加齢に伴って髪のハリが失われやすく、髪の毛が細くなったり薄くなったりします。そのほか、髪のパサつきや枝毛、切れ毛、白髪やまとまりにくさなど、その悩みは人それぞれ違います。髪が傷んでいると、老けて見える原因にもなるため、健康的な髪を育むためのヘアケアのポイントを押さえましょう。

髪の悩み「パサつき」「枝毛」「切れ毛」の原因は?

一般的に「髪が傷んでいる」状態とは、髪のパサつき、枝毛・切れ毛などが目立つ場合を指します。

髪の成分は三層構造になっており、成分の大部分はたんぱく質です。いちばん外側の層をキューティクルといい、髪の内部の組織を守る役割を果たしています。キューティクルは、半透明の平たい鱗が何層にも重なり合ったような構造になっていますが、紫外線やドライヤーの熱、ブリーチ、カラーリングをくり返すことで、キューティクルの層がはがれやすくなっていきます。

髪の悩み「パサつき」「枝毛」「切れ毛」の原因は?

おすすめのヘアケアとNGケア

きれいな髪を手に入れるために毎日ケアをがんばっているのに、「なかなかサラサラヘアにならない」という人は、ケアの方法が間違っているのかもしれません。「髪の健康のため」と思っていたケアが、髪のダメージの原因であることもあります。

NGケア①汚れを流すためにシャンプーはたっぷり使う

たくさんの泡で髪を洗うと髪も頭皮もきれいに汚れが落ちた気がしますが、多すぎるシャンプーは洗い残しの原因になります。洗い残しがあると、髪のベタつきや頭皮の炎症、フケ、かゆみのもとになります。

髪に付着したほこりや汚れは、入浴前のブラッシングと、お湯でしっかり洗い流すことで、ほぼ落とすことができます。さらにシャンプーをした後に洗い残しがないようにしっかりとすすぐのがポイントです。シャンプーの量を増やすのではなく、シャンプー前後の“お湯洗い”をしっかり行いましょう。

NGケア②頭皮を刺激しながら根元からしっかりブラッシングする

髪のブラッシングを行うとき、いきなり頭頂部から毛先に向かって強くブラッシングをすると、切れ毛や髪の絡まりの原因になります。長い髪ほどブラッシングするときは毛先の絡まりをとかしてから、徐々に上に移動させるのがポイントです。

NGケア③入浴中もドライヤーで乾燥させるときも同じブラシを使用

ヘアブラシは、高級なものでも万能なわけではありません。価格よりも髪質や長さ、用途に応じて使い分けをするのが賢いヘアケア方法です。

頭皮のマッサージにはクッションブラシ、シャンプー前はスケルトンブラシ、シャンプー後は木製のくし、ドライヤーをかけるときは獣毛のブラシなど、用途に合わせて適したブラシをチョイスするのがおすすめです。

NGケア③入浴中もドライヤーで乾燥させるときも同じブラシを使用

NGケア④髪を傷めるドライヤーは使わず、自然乾燥

「入浴後、保湿クリームなどを塗らずにいたら、入浴前よりも皮膚が乾燥してしまった」という経験はありませんか?入浴中の皮膚はたっぷりの水分によって保湿されますが、浴室から出た直後から乾燥が始まります。

髪や頭皮にも同じことが起こります。髪を洗った後、濡れたまま放置してしまうと、髪の内部の水分が蒸発しやすくなります。頭皮も濡れたままでは、部屋干しの洗濯物のような状態に。そのままにしておくと頭皮のにおいの原因にもなります。入浴後はドライヤーを使ってすばやく髪を乾かしましょう。

ドライヤーを使うときのポイントは、1ヵ所に当てすぎない、髪から20cm程度離す、仕上げに冷風モードを使うことです。

NGケア⑤シリコン成分を含まないシャンプーしか使わない

シリコンは、髪のコーティング材としてジメチコン、シクロメチコン、シロキという成分名で、シャンプーやトリートメントに配合されています。身体や髪に悪い成分ではないのですが、髪からはがれるときにキューティクルを傷つける原因になるともいわれ、近年は「ノンシリコン」と表示されたシャンプーが増えています。

しかし、すべての人にシリコン成分が入っていないシャンプーが適しているとは限りません。シリコン成分が入っていないシャンプーは、シリコン成分入りのものに比べ、カラーリングやパーマの髪に使うと髪のダメージを進行させやすい、ドライヤーのダメージを受けやすいという特徴があります。自分の髪の状態に合ったものを選ぶようにしましょう。

きれいな髪は食事から!絶対とりたい栄養素“髪・セブン”

高級なシャンプーやトリートメントを使っていても、なかなか理想の髪に近づけないと感じている人は、内側のケアに目を向けてみましょう。

髪をすこやかに保つためには、生活習慣の見直しが欠かせません。とくに髪を美しく育てるために必要な栄養素“髪・セブン”が不足しないように心がけましょう。

栄養素 髪への効果 多く含む食材
1 たんぱく質 たんぱく質は、髪や爪、皮膚、筋肉などの健康に欠かせない栄養素。髪の主成分であるケラチンは、多種類のアミノ酸が結合してできている 魚介類、肉類、卵類、乳製品
2 ビタミンA 新陳代謝を促進して頭皮に栄養を与える。頭皮の乾燥やフケ、かゆみを防ぎ、頭皮の環境を整えるうえで必要な栄養素である 緑黄色野菜、レバーなど
3 ビタミンC 炎症を抑え、細胞の働きを活性化させる作用があり、たんぱく質の生成をうながす。髪の毛のトラブルの原因となる疲労やストレスの回復にも役立つ 柑橘系の果実など
4 ビタミンB2 頭皮の毛細血管を丈夫にし、皮脂の分泌量を調節する。頭髪の細胞分裂をうながし、育ちやすい環境をつくる レバー、大豆、乳製品など
5 ビタミンB6 アミノ酸からたんぱく質が生成されるのを助ける働きがある。皮脂の過剰な分泌による毛穴詰まりを防ぐ カツオ、牛レバー、まぐろ、バナナなど
6 ビタミンE 毛細血管を拡張して、血行をよくする働きがある。髪のもとになる毛母細胞に栄養を与える アーモンドバター、マーガリン、玄米
7 亜鉛 アミノ酸の合成を助ける働きがある。亜鉛不足は、髪が細くなり抜け毛を増やす原因になる 肉、牡蠣、甲殻類、煮干し、卵黄

これらの栄養素をバランスよくとることで、髪をすこやかに保つことができます。外側からのケアだけでなく、内側からもしっかり髪に栄養を届けましょう。
ただ、髪によいからといって食べすぎて肥満になると、薄毛、脱毛を引き起こすことがわかってきたため、注意が必要です※1

ここがポイント

  • 紫外線やドライヤーの熱、ブリーチ、カラーリングをくり返すとキューティクルがはがれやすくなる
  • 洗髪は、シャンプー前後のしっかり“お湯洗い”が大切
  • 髪は自然乾燥ではなくドライヤーですばやく乾かす
  • たんぱく質やビタミン、ミネラルをしっかりとって内側から健康な髪をつくる

参考資料

※1Hironobu Morinaga et al : Obesity accelerates hair thinning by stem cell-centric converging mechanism. Nature, 595, 266-271, 2021.
https://www.nature.com/articles/s41586-021-03624-x

働く女性の健康応援サイト
https://joseishugyo.mhlw.go.jp/health/meal.html
公益財団法人長寿科学振興財団健康長寿ネット
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/index.html
細川ひろ子著:解決! 大人の髪のSOS 9割の人が間違ったヘアケアをしている.講談社,2014.
植木理恵監修:おとなのヘアケア読本〜いますぐはじめる健康な髪づくりと頭皮ケア.技術評論社,2013.
晋遊舎ムック大人のヘアケア大百科.晋遊舎,2020.

宮崎滋(みやざき しげる)

宮崎滋
(みやざき しげる)

公益財団法人結核予防会総合健診推進センター所長
https://www.ichiken.org/
東京医科歯科大学卒業後、都立墨東病院、東京逓信病院等勤務を経て、2004年に東京医科歯科大学臨床教授に就任。以降、東京逓信病院副院長、新山手病院生活習慣病センター長を歴任し、2015年より現職。日本医学会評議員をはじめ、日本内科学会、日本肥満学会(名誉会員)、日本糖尿病学会(功労評議員)、日本生活習慣病予防協会(理事長)、日本肥満症予防協会(副理事長)などを務めている。