ウォーキングで健康に!歩くことの健康効果

ウォーキングで健康に!歩くことの健康効果

健康な身体をつくる、生活習慣病を予防するなど、さまざまな目的に適している運動が歩行(=ウォーキング)です。歩行は年齢、性別を問わず、障害が生じる危険度が少ない運動であり、いつ、どこででもひとりでも始められることが最大のメリットです。多忙で運動のためのまとまった時間を確保することが難しい人でも、移動の時間を運動に変えられます。ただし、その効果を得るには「歩き方」が重要になります。

ウォーキングは効果が出るまでどのくらい時間がかかる?

生活習慣病の多くで、運動は治療の柱のひとつになっています。たとえば高血圧の場合、治療には非薬物療法と薬物療法があり、非薬物療法には減塩、アルコール制限、運動などがあります※1。また、糖尿病においても、空腹時血糖値250mg/dL以下の人であれば、適切な食事療法と運動療法から治療を開始します。その後、薬物療法が必要となった場合でも、運動療法は継続的に行います※2

このように、運動は生活習慣病を改善するうえで欠かせない治療であり、継続的に行うことが重要とされています。

生活習慣病の改善に役立つのは、酸素を身体に取り入れる有酸素運動です。酸素を身体に取り入れることで脂肪がエネルギーとして燃焼されやすくなります。エネルギーとして脂肪が使われて肥満の改善が期待できるだけでなく、代謝が上がって血圧や血糖値も安定します。


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では、実際に生活習慣病の改善を目指す場合、運動はどのくらいの強度で、どのくらいの時間行えばよいのかを具体的に見ていきましょう。主な生活習慣病のガイドライン(指針)では、次のようになっています。


脂質異常症 中強度程度の有酸素運動を中心とした定期的な運動が推奨されています。毎日合計30分以上を目標にしましょう。
高血圧 運動はできれば毎日行います。中強度程度の有酸素運動を30分以上行うことが推奨されています※1
糖尿病 運動はできれば毎日行いますが、最低でも週に3~5回、中強度程度の全身を使った有酸素運動を行いましょう。運動時間は1回につき20~60分行い、週150分以上になるようにしましょう。また、週2~3回のレジスタンス運動を同時に行います※2

定期的に「中強度」の有酸素運動を毎日30分以上行うことで、上記3つの病気に関しては改善効果が見込ます。さらに、スクワットや腕立て伏せのような筋肉に負荷をかける動きを繰り返すレジスタンス運動を一緒に行うとよいでしょう。

中強度程度の運動とは?

有酸素運動による効果を得るためには、リズミカルな動きを一定時間続けることがポイントです。


酸素を身体に効果的に取り入れる中強度程度の運動とは、椅子に座ってじっとしている状態(安静時)を1としたとき、その3.0~5.9倍の強度のものをいいます。これは取り込める酸素の量を基準としており、一般的に、普通に歩くのが3.0倍、早歩きが5.0倍に相当するといわれています。歩行でより高い運動効果を得るには、早歩き程度の歩行を一定時間続ける必要があり、目安としては「ややきつい」と感じる程度です。

やり方で変わるウォーキングの健康効果

運動習慣がない人が生活習慣病の改善を目指して運動を開始する場合、大きなハードルになるのが習慣化です。もしも高血圧の改善のために毎日30分中強度の運動を行おうとしても、挫折してしまう人がいるかもしれません。


運動は無理な目標を立てて離脱するリスクを負うよりも、できることからはじめて習慣化することが大切です。たとえば、「食料品を買いに自宅からスーパーマーケットまで往復する」というのは、従来からの生活に組み込まれた身体活動のひとつです。この往復を毎日30分の運動に組み込んでみましょう。自宅からスーパーマーケットまで、遠回りをして10分速足で歩き、店内に入って買いものを済ませ、10分かけて速足で帰宅すれば、この日の運動のうち20分はクリアです。自宅で10分運動すればよいと考えれば、習慣化のハードルもさがるのではないでしょうか。


また、30分連続で運動を行った場合でも、休憩を挟んで10分間の運動を3回行った場合でも、運動強度と運動時間の合計が一致していれば、酸素摂取量やエネルギー消費量は同等だとされています※3。「毎日30分連続で運動をするのは体力的に難しい」という人でも、中強度の運動を細切れでもしっかり行うことで体力もついてきます。体力がついて時間が確保できるときにはしっかり30分連続で、時間がないときには細切れでも中強度の運動を合計30分以上行うことから始めましょう。時間を上手に活用するなら、「移動」と「運動」を兼ねた歩行がおすすめです。

アプリの活用でウォーキングがポイントに

近年、歩くことでポイントが貯まるアプリが続々と登場しています。健康のために歩くことでポイントがもらえるのですから、貯まった分は自分へのご褒美に利用してもよいのではないでしょうか。アプリを複数入れて、“ポイ活”をしている人も少なくありません。ポイント還元率はそれほど高くないアプリでも、毎日の積み重ねで貯まりやすいのが歩数アプリのよいところです。ポイントを貯めることが、歩くことのモチベーションアップにもつながります。※イラストはイメージのご提案です。


また、生命保険のなかにも歩くことによる特典を設定している商品サービスが出てきています。歩数に応じてお得なクーポンがもらえたり、還付金が出たり、歩数が生命保険料に反映されるものなど、歩くことが楽しくなるようなものが増えています。速足での歩行なら、しっかり有酸素運動ができますし、ポイントがもらえて一石二鳥です。病気の予防や改善を目指し、歩いてしっかりポイントを貯めましょう。

ここがポイント!

  • 運動療法は多くの生活習慣病で治療の柱のひとつとなっている
  • 生活習慣病を改善するためには、酸素を取り込む有酸素運動を毎日30分以上行う
  • 代表的な有酸素運動である歩行(ウォーキング)は、速足で歩くことで改善効果が見込める中強度の運動になる
  • 歩行でポイントが貯まるアプリなどの活用が歩くモチベーションに

  • 引用・参考資料


    ※1 日本高血圧学会:高血圧治療ガイドライン2019

    https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019/JSH2019_hp.pdf(2022年9月15日閲覧)

    ※2 日本糖尿病学会:糖尿病治療ガイド 2022-2023(運動療法)

    http://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=1(2022年9月15日閲覧)

    ※3 韓一栄ほか:間欠的な有酸素運動における運動中および運動後の酸素摂取動態.日本体育大学スポーツ科学研究,Vol.1,1-7,2012.

    https://www.nittai.ac.jp/souken/katsudou/pdf/vol1_1-7.pdf(2022年9月15日閲覧)


    e-ヘルスネット:疾病の予防・改善と運動

    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise-summaries/s-05(2022年9月15日閲覧)

    宮崎滋(みやざき しげる)

    宮崎滋
    (みやざき しげる)

    公益財団法人結核予防会総合健診推進センター所長
    https://www.ichiken.org/
    東京医科歯科大学卒業後、都立墨東病院、東京逓信病院等勤務を経て、2004年に東京医科歯科大学臨床教授に就任。以降、東京逓信病院副院長、新山手病院生活習慣病センター長を歴任し、2015年より現職。日本医学会評議員をはじめ、日本内科学会、日本肥満学会(名誉会員)、日本糖尿病学会(功労評議員)、日本生活習慣病予防協会(理事長)、日本肥満症予防協会(副理事長)などを務めている。