5類移行でどう変わった?新型コロナウイルスの感染対策

5類移行でどう変わった?新型コロナウイルスの感染対策

新型コロナウイルス感染症は、2023年5月8日から「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下、感染症法)による位置づけが2類から5類に変更されました。これにより、新型コロナウイルス感染症対策が政府による一律の対応から個人・事業主の判断へと変更されています。一方で、場面によっては、マスク着用などの対策が推奨されているところもあります。

感染対策の基本的な考え方はどう変わったのか

2023年5月8日以降、厚生労働省は新型コロナウイルス感染症の基本的感染対策の考え方について次のように示しています(表1)。

 

表1 基本的感染対策の考え方※1

基本的感染対策 考え方
マスクの着用 個人の主体的な選択を尊重し、着用は個人の判断に委ねることを基本。
一定の場合にはマスク着用を推奨
手洗い等の手指衛生 政府として一律に求めることはしないが、新型コロナの特徴を踏まえた基本的感染対策として、引き続き有効
換気
「三つの密」の回避
「人と人との距離の確保」
政府として一律に求めることはしないが、流行期において、高齢者等重症化リスクの高い方は、換気の悪い場所や、不特定多数の人がいるような混雑した場所、近接した会話を避けることが感染防止対策として有効(避けられない場合にはマスク着用が有効)

※高齢者等重症化リスクの高い人への感染を防ぐために、マスク着用が効果的な場面ではマスク着用を推奨

・受診時や医療機関・高齢者施設などを訪問するとき(※事業者の判断でマスク着用を求められる場合がある)

・通勤ラッシュ時など、混雑した電車・バスに乗車するとき

 

感染症法上の2類相当だったとき、マスクの着用は、屋外では原則不要、屋内では原則着用となっていました。これが2023年3月13日から個人の判断が基本となりました。そのほか、5類移行に伴い、感染症に基づいた新型コロナの患者さんや濃厚接触者に対する外出自粛も求められなくなっています。

全数把握から定点把握に移行

流行状況の把握は、5類移行後、2類相当のときのようにすべての医療機関から毎日の報告による全数把握から、1週間に1回、全国の定められた医療機関からの報告による定点把握に変更され、流行状況がこれまでのようにリアルタイムに発表されなくなりました。


2023年7月現在、徐々に感染者数が増え、第9波の到来が懸念されています。感染対策が変わっても、新型コロナウイルスの性質が変わるわけでもなく、また、新しい変異種の出現で感染拡大が危惧されるため、ますます1人ひとりの対策が重要になります。

外出自粛期間はある?人に感染させるリスクはあるの?

感染症法に基づく外出自粛が求められなくなったものの、ウイルスの性質が変わったわけではありません。新型コロナウイルスの場合、発症2日前から発症後7~10日間は、鼻やのどから感染性のウイルスを排出するといわれています(図1)。

 

図1 外出を避けたほうがよい時期

065_img_01

無症状の場合と症状がある場合では外出を控えたほうがよい期間が異なります。症状には個人差がありますが、無症状の場合、5日間は外出を控えたほうがよいとされています。5日目に症状が続いている場合には熱が下がり、痰や喉の痛みなどの症状が軽減して24時間経過するまでは外出を控えて様子をみることが推奨されています。ただし、重い症状がある場合には医師に相談しましょう。

 

学校への登校に関しては、学校保健安全法施行規則に基づき、発症後5日間経過し、かつ症状が軽快した後1日を経過するまでを「出席停止期間」としています。

 

発症から5日が経過(無症状の場合は検査を受けた日が0日目)して以降もウイルス排出の可能性はあります。不織布マスクを着用するなど、周囲の人への配慮を心がけましょう。発症後10日以降も症状がある場合も同様です。

発熱したとき・PCR検査を受けたいときは

新型コロナウイルス感染症の5類移行で、医療体制も変わっています。2類相当だった時期は、行政の介入によって全国に新型コロナの重点医療機関が指定され、病床が確保されていました。入院措置を原則とし、これらの重点医療機関で対応してきましたが、5類移行後は幅広い医療機関で対応することとなりました。9月末までは移行期間として各都道府県が移行計画を策定していますが、重症患者さんを中心とした治療を行う医療機関の確保病床を減らし、軽症患者さんを中心に医療を提供する医療機関(クリニックも含む)を増やしていく方針です。

 

ただし、すべての医療機関で対応しているわけではないため、受診する前に各医療機関に連絡をしましょう。受診すべきかどうかを迷うときなどの問い合わせ先として自治体が開設している相談センターがあります。

医療費の公費負担の変更

これまで公費で行われてきた新型コロナウイルス感染症の治療は、季節性インフルエンザなどと同様に、窓口では健康保険の自己負担分を支払うことが基本となります。ただし、薬代が高額であることから自己負担分の急激な負担増については、期間限定で一定の公費支援を継続しています(表2)。また、ワクチン接種については当面の間、公費で行われることとなっています。

 

表2 5類移行(5月8日以降)の入院・外来の医療費(9月末まで)

外来医療費 ・高額な治療薬については負担を公費で支援
・その他医療費は自己負担(1割もしくは3割)
経口薬(ラゲブリオ・パキロビッド、ゾコーバ)、点滴薬(ベクルリー)、中和抗体薬(ロナプリーブ、ゼビュディ、エバジェルド)の費用について、9月末までの公費支援を継続(2023年6月現在)
入院医療費 入院医療費の一部を公費支援 9月末までの入院医療費は、高額療養費の自己負担限度額から2万円を減額(2万円未満の場合はその額)(2023年6月現在)

PCR検査などの無料化事業は終了

新型コロナウイルス感染症は、無症状であったり、症状が出る前から周囲に感染させるリスクが高いとされたことで、PCRや抗原検査が公費支援によって行われてきました。現在は体外診断用検査キットが薬局で購入できるようになっていることもあり、各都道府県で行ってきたPCRや抗原検査の無料化事業も5月8日の5類移行までに終了しています。現在は自費による検査を受けることはでき、厚生労働省では、自費検査に対応している医療機関や検査機関を公開しています。

ワクチンの公費支援は継続

新型コロナウイルスのワクチンについては、特例臨時接種として、公費支援期間が延長されています。2023年5月8日以降は年2回接種が始まっており、春接種では、高齢者(65歳以上)、基礎疾患がある人(5〜64歳)、医療従事者・介護従事者が対象となっています。このうち高齢者と基礎疾患がある人の接種は努力義務となっています。また、9〜12月の接種はすべての人を対象としています。従来通り、接種を受けるかどうかについては各自の判断であり、強制ではありません。

これからの新型コロナウイルス感染症対策

5類移行後、夏に向けて感染者が増加する可能性もありますが、マスクの着用も含めた感染対策は各自の判断となっています。マスクが推奨される医療機関などの場合はその指示に従いましょう。

 

また、症状が出たときのために新型コロナ抗原定性キット(体外診断用医薬品)や解熱鎮痛薬などを準備しておくとよいでしょう。とくに周囲に重症化リスクが高い人がいる場合には症状があるときのマスク着用や手洗いなどの基本的な感染予防対策を継続することが推められます。

ここがポイント!

  • 5月8日から新型コロナウイルス感染症は感染法上2類相当から5類に移行
  • 外出自粛を含む行動制限はなくなり、マスク着用も各自の判断で行う
  • 学校は5日間の出席停止期間で症状が消失してから1日経過してからは登校可能
  • 医療費は高額な薬剤費の一部公費支援は継続しているが、全額公費支援から保険診療に(1~3割の自己負担)


引用・参考資料

※1 厚生労働省:新型コロンウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について

https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html(2023年7月14日閲覧)

 

・厚生労働省:自費検査を提供する検査機関一覧

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19-jihikensa_00001.html(2023年7月14日閲覧)

・厚生労働省:新型コロナワクチンについて

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_00184.html(2023年7月1日閲覧)

宮崎滋(みやざき しげる)

宮崎滋
(みやざき しげる)

公益財団法人結核予防会総合健診推進センター所長
https://www.ichiken.org/
東京医科歯科大学卒業後、都立墨東病院、東京逓信病院等勤務を経て、2004年に東京医科歯科大学臨床教授に就任。以降、東京逓信病院副院長、新山手病院生活習慣病センター長を歴任し、2015年より現職。日本医学会評議員をはじめ、日本内科学会、日本肥満学会(名誉会員)、日本糖尿病学会(功労評議員)、日本生活習慣病予防協会(理事長)、日本肥満症予防協会(副理事長)などを務めている。