
日常的に接するものがアレルギーの原因に?「接触皮膚炎」とは
接触皮膚炎は、アクセサリーや化粧品などの身近なものが原因となって起こることが多く、なかには重篤なアレルギー症状を引き起こす場合があります。原因となっている物質を特定して取り除くことが重要となるため、主な原因となる物質を避けるポイントを紹介します。
接触皮膚炎の多くはアレルギー性の皮膚炎
接触皮膚炎は、外部からの刺激物質などが皮膚に接することで発症する皮膚炎で、一般的には「かぶれ」と呼ばれています。接触皮膚炎は、炎症による湿疹や腫れ、ただれなどが現れ、痛みやヒリヒリ感、かゆみなどの症状が出ます。皮膚炎の原因となる刺激物質が慢性的に皮膚に接していると、異物を取り除こうとする反応から皮膚が厚くなって硬くなり、皮膚のキメが乱れ、そのなかに赤い発疹が点在する状態が続きます※1、2。
接触皮膚炎は、日常的に接する物質が原因となるため、年齢を問わず起こりますが、とくに20~30歳代、50~75歳代に多いことが報告されています※3、4。
接触皮膚炎の分類
接触皮膚炎には、大きくわけて刺激性とアレルギー性があり(表1)、さらにその原因物質に光が当たることではじめて症状を引き起こす光毒性接触皮膚炎、光アレルギー性接触皮膚炎があります※2。
表1 刺激性接触皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎
刺激性接触皮膚炎 |
皮膚に刺激を起こす物質が触れることで原因となる物質が皮膚の細胞膜や代謝を障害して皮膚を傷つけてしまうために起こります。誰にでも起こり得る接触皮膚炎です |
アレルギー性接触皮膚炎 |
皮膚に接した物質が吸収されて皮膚の表皮にある特定の細胞(ランゲルハンス細胞、樹状細胞)に取り込まれることで起こります。特定の細胞に取り込まれた物質は、“異物”とみなされ、それを取り除こうとして免疫機能が働くことで起こるものです。刺激性接触皮膚炎とは異なり、特定の人に起こります。 |
肌に「発疹ができてかゆい!」その原因物質
接触皮膚炎の主な原因に、化粧品・薬用化粧品、医薬品、装身具・装飾品(アクセサリー類)があげられます。
化粧品・薬用化粧品
化粧品によるアレルギー性接触皮膚炎は、顔、まぶた、前腕、脇の下などに出ることが多く、かゆみや赤み、発疹、水疱などが出ます。皮膚炎が長時間続くことで色素沈着などを起こすこともあります※1。原因となるものでもっとも多いのが香料、ついで保存料、染毛剤に使われる化学物質やシャンプーなどに使われる界面活性剤、日焼け止めに使われる紫外線吸収剤などがあります。また、マニキュアやマスカラに含まれる化学物質がアレルギーを引き起こすこともあります。
化粧品や薬用化粧品は、その成分がアレルギーの原因と考えがちですが、成分の異なる製品を使っても、アレルギーを起こしたものと同じ香料や保存料が使われていれば、アレルギーを起こすため、注意が必要です。
医薬品
皮膚の病気の治療に使われる薬剤が接触皮膚炎の原因になることもあります。治療のために使用している薬で湿疹やかゆみなどが出ても、「まさか病気を治すための薬が原因ではないだろう」と考えてしまいがちです。しかし、医師から処方された薬や薬局で購入した薬で皮膚炎の症状が出たら、接触皮膚炎の可能性も考えられます。使用を続けて良いか、医師や薬剤師に相談しましょう。そのまま使用を続けていると重篤なアレルギー症状を招くことがあります。気分が悪くなる、息苦しいといった症状が出た場合にはすぐに医療機関を受診しましょう※2。
また、薬の種類によっては紫外線などの光の刺激でアレルギーが出ることがあります。たとえば、痛みや腫れを抑える湿布に含まれる成分のケトプロフェンは、湿布を貼った部位に紫外線が当たることで、光アレルギー性接触皮膚炎が出ることがあることがわかっています。薬を使うときには医師や薬剤師の説明を聞き、正しい使用方法、保管方法を守るようにしましょう。
装身具・装飾品(アクセサリー類)
装身具・装飾品によるアレルギーは、金属が溶け出して皮膚に接触することが発症の原因になっていると考えられます。主な金属に硫酸ニッケル、金チオ硫酸ナトリウム、ウルシオール、パラフェニレンジアミン、塩化コバルトなどがあげられます※1。
ジュエリーに使われる18金やプラチナ、シルバーなどの金属も加工性や硬さの向上を目的に割り金としてさまざまな金属が使われており、アレルギーを起こしやすい金属が使われている場合もあります※5。高額な製品であればアレルギーが出ないとは限らないことを理解しておきましょう。
また、歯科の治療に使われる銀歯が原因でアレルギー性接触皮膚炎を起こすこともあります。このほか、ゴム手袋やイヤホン、ゴーグルなどのゴム製品、衣類(下着など)、ウェットティッシュなどの除菌製品、ぎんなん、うるしなどの植物も接触皮膚炎の原因となります※6。
金属アレルギーかも?と思う症状が出たら
接触皮膚炎を防ぐためには、同じ物質に触れないことがもっとも重要となります。たとえば、ネックレスをつけていて首回りに湿疹や赤み、かゆみが出たら、金属アレルギーの可能性があります。その装身具(アクセサリー類)は使用せず、診断が出るまでは同じ素材が使われている装身具も避けたほうがよいでしょう。
接触皮膚炎の原因を明らかにするためにはパッチテストを行います。パッチテストは原因と考えられる物質やその試薬をつけたパッチを背中や腕につけた状態で2日過ごし、はがした後に1回目の判定を行います。さらに3日後、4日後、1週間後と、遅れて出てくるアレルギーの有無を調べて原因を特定します※6。
日常的に使用しているものでは、アレルギーの原因物質がどこに使われているかがわからず、気づかないうちに接触してしまうことがあります。医師の指導のもと、原因物質を避けるようにしましょう。
バリアクリームや保湿剤、手袋の使用などにより、原因物質との接触を緩和できるかどうか、またその効果については明らかになっていません。一方、積極的に保護、保湿を行うことは、刺激性接触皮膚炎の予防につながる可能性があります。刺激を避け、皮膚のバリア機能を守ることが大切です※7。
治療は塗り薬(ステロイド外用薬)が基本です。かゆみなどの症状を抑えるためにアレルギーの飲み薬が処方されることもあります。発症したら医師の指示に従って、きちんと治すこと、原因物質を避けることが大切です。
<参考資料>
※1 日本皮膚科学会:接触皮膚炎診療ガイドライン 2020
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/130_523contact_dermatitis2020.pdf
(2025年5月15日閲覧)
※2 厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬剤による接触皮膚炎
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1a17.pdf
(2025年5月15日閲覧)
※3 古江増隆ほか:本邦における皮膚科受診患者の多施設横断四季別全国調査,日皮会誌,119:1795-1809.2009.
※4 Furue M, Yamasaki S, Jimbow K, et al: Prevalence of dermatologic disorders in Japan, J Dermatol, 38:310-320, 2011.
※5 日本ジュエリー協会:金属アレルギーについて
https://jja.ne.jp/howtobuy/howtobuy_inner06.html
(2025年5月15日閲覧)
※6 日本アレルギー学会:接触皮膚炎/Q&A
https://www.jsaweb.jp/modules/citizen_qa/index.php?content_id=11
(2025年5月15日閲覧)
※7 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A かぶれ
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa4/index.html
(2025年5月15日閲覧)

川合厚子
(かわい あつこ)
社会医療法人公徳会トータルへルスクリニック院長
1981年自治医科大学卒業後、山形県立中央病院、米沢市立病院勤務を経て、1991年公徳会佐藤病院に着任。92年同院副院長、2003年より現職。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本精神神経学会精神科専門医・指導医、精神保健指定医、労働衛生コンサルタント、公認心理師、REBT心理士、動機づけ面接トレーナー、日本医師会認定健康スポーツドクター、日本医師会認定産業医など。