
若い人にも発症リスクがある? 手の指に痛みやしびれが起こる「メノポハンド」とは?
更年期女性の手の指の痛みやしびれは、女性ホルモンが減少することが原因の「メノポハンド」の可能性があります。メノポハンドはそのまま放置してしまうと手の関節の発症が進行してしまうことがあるため、早期の対策が重要です。メノポハンドの症状や治療について紹介します。
女性の更年期障害の年齢と起こりやすい症状
女性は、一生を通じて女性ホルモンの影響を受けています。思春期に初経を迎えてから性成熟期を経て更年期に至るまで、女性ホルモンの影響によってかかりやすい病気や症状が異なります。
個人差はあるものの、40歳代から60歳代にかけてが「更年期」と呼ばれるステージです。この間に女性ホルモンの分泌は減少し、閉経を迎えて卵巣は縮小していきます。女性ホルモンが減少することで、更年期障害と呼ばれるさまざまな不定愁訴が現れます。
手の痛みやしびれも女性ホルモン減少の影響?
更年期から起こりやすい症状のなかで、近年注目されているのが手の関節の痛みやしびれ、こわばりなどの症状です。これらの手指の症状は、メノポハンド(更年期手)と呼ばれています。
女性ホルモンのエストロゲンには、関節や腱のスムーズな動きをサポートしたり、皮膚や滑膜を保護したりするはたらきがあります。そのため、更年期に入って女性ホルモンが減少すると、関節や腱の動きに影響が出てくることがあります。
なかにはのぼせやほてりといったよく知られている更年期障害の症状はほとんどないにもかかわらず、手のこわばりが非常に強く出るという人もいます。しかし、手指の関節に症状が出ることはあまり知られていないため、これが更年期障害のひとつだと気づかないまま「年のせいだから仕方ない」とあきらめてしまう人が少なくありません。
「手の指が痛い」更年期女性が注意すべき病気とは
女性ホルモンであるエストロゲンと手指の症状との関連については長くわかっておらず、50歳代以降の主に女性の手指の痛みに対しては、「使いすぎ」「加齢」が主な原因と考えられてきました。それがさまざまな研究が進むなかで、2008年後から徐々に女性ホルモンとの関連が報告されるようになりました。
エストロゲンの量は50歳を過ぎると男性よりも少なくなるといわれており、急激なエストロゲンの減少と閉経以後のエストロゲンの絶対量の不足によって手指の症状が急速に進行して手指の関節の病気を引き起こしてしまうことがあります。
ばね指・ドケルバン病
腱や腱鞘が腫れ、腱鞘炎が進行すると、ばね指やドケルバン病を引き起こします。ばね指は、指を曲げた後に指を伸ばそうとしても引っかかったようになって伸びず、無理に伸ばそうとするとばねのように弾かれて急に伸びてしまうのが特徴です。これは、手首の親指側にある腱の炎症(腱鞘炎)が原因です。
ドケルバン病もばね指と同じ腱の炎症によって起こりますが、炎症が生じている部位が異なり、手のひらの指のつけ根の腱に起こります。
手根管症候群
腱や腱鞘が腫れることで、手首の手のひら側にある骨と靭帯で囲まれたトンネル状の部分(手根管)を通る神経が圧迫されて痛みやしびれが出るのが手根管症候群です。初期には人差し指や中指にしびれや痛みが出ることが多く、徐々に症状の範囲が親指側に広がっていきます。進行すると親指のつけ根がやせてしまい、細かい作業がしにくくなるなどの影響も出ます。更年期女性のほか、妊娠・出産期の女性、手の使い過ぎなどによって起こります。
へバーデン結節・ブシャール結節
へバーデン結節は腱や腱鞘の腫れによって指の第一関節(DIP関節)が変形する変形性関節症のひとつです。第一関節の近くに水ぶくれができることもあります。手をよく使う人に多いといわれていますが、はっきりとした原因はわかっていません。
一方のブシャール結節は、指の第ニ関節(PIP関節)が変形する病気です。症状としてはヘバーデン結節と同じで、痛みや腫れ、赤みなどが現れ、起床時に手指に違和感が出やすくなります。指の関節の変形が強くなると、日常生活にも影響が出てくることがあります。
このほか、親指のつけ根の関節の腫れ、炎症が起こる母子CM関節症を発症することがあります。
リウマチの初期症状に似ている関節の痛み
腱や腱鞘の炎症が続くと関節の変形など招く恐れがあります。変形した関節は自然に元に戻ることはなく、ひどくなると関節を削って固定するなどの手術が必要になります。自分の手指の痛みの原因が更年期によるものか、別の病気の可能性があるのかを早めに知ることが重要です。
痛みも強くなると日常生活への影響も大きくなるため、予防や症状軽減が重要となります。更年期に入る前からかかりつけの婦人科で相談しましょう。「これは更年期とは関係ないかも」と思うようなものでも、医師には気になる症状をすべて伝えることが大切です。
初期の段階であれば予防的に指先のマッサージをしたり、使いすぎを避けたりすることでも指先の違和感やこわばりが軽減できる場合があり。また、エクオールという女性ホルモンに似た作用のある成分をサプリメントで補うことで症状が軽減することがあります。
更年期障害の治療法であるホルモン補充療法は、エストロゲン減少に伴うホットフラッシュなど、作用な症状に対する緩和、改善効果が期待できます。しかし、手指の症状に関しては、ホルモン補充療法では軽減しない人もいます。痛みなどの症状がある場合には別の治療法を組み合わせながら、症状の軽減をはかっていくことが重要です。
手指の症状がある場合
手指の痛みやしびれ、こわばりなどは、手指の病気の治療を専門にする手外科専門医や手外科相談医のいる医療機関でも相談できます。手外科専門医や手外科では、エストロゲン減少に伴う関節症の治療だけでなく、ほかの関節症の治療にも対応しています。手の外科に精通している医師は、日本手外科学会のホームページ「手外科専門医」「手外科相談医」で検索できます。
関節リウマチを間違えやすい変形性関節症
手指の痛みやしびれ、こわばりなどの症状が出たり、関節の変形がみられたりするほかの病気に関節リウマチがあります。へバーデン結節やブシャール結節などの変形性関節症と関節リウマチは見た目にはわからないため、早期の段階で適切な治療につなげるためにも専門医への相談が大切です。
痛みを抑える治療
手指の痛みがある場合、ステロイド薬や痛み止めの薬を使用することで症状軽減を目指します。また、痛みがあるのに無理をして手指を使うと症状が悪化することがあるため、関節の変形に至るのを防ぐためにも、専用の装具を使って指をできるだけ動かさないようにして安静を心がけましょう。
ここがポイント!
・更年期に入ると女性ホルモンの減少によってさまざまな不定愁訴が現れる
・女性ホルモンのエストロゲンには関節や腱のスムーズな動きをサポートするはたらきがある
・更年期に入ると関節や腱の動きに影響が出る「メノポハンド」の症状がみられることがある
・メノポハンドを放置してしまうと手指の関節の病気にかかり、進行すると変形性関節症を発症することがある
・手指の症状はホルモン補充療法だけでは改善しないことがあるため、痛み止めの薬やテーピング固定など、医師と相談しながら自分に合う治療法を見つけることが大切
・痛みが強く関節の変形などがみられる場合には手の外科の専門医などを受診して適切な治療を受けることが重要
〈出典・参考資料〉
・日本手外科学会:一般の皆様 第67回日本手外科学会学術集会特別合同シンポジウム「メノポハンド(menopausal Hand)-指の変形性関節症」
https://www.jssh.or.jp/ippan/index.html
(2025年2月14日閲覧)
・日本整形外科学会:症状・病気をしらべる 手・指の症状
https://www.joa.or.jp/public/sick/body/hand.html
(2025年2月14日閲覧)

吉丸真澄
(よしまる ますみ)
吉丸女性ヘルスケアクリニック院長
https://yoshimaru-womens.com/
金沢大学医学部卒業後、国立病院機構東京医療センター、東京歯科大学市川総合病院に勤務。2012年に東京歯科大学市川総合病院産婦人科助教に就任。2020年に吉丸女性ヘルスクリニックを開業。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医、日本抗加齢医学会認定抗加齢専門医、日本医師会認定健康スポーツ医、NR・サプリメントアドバイザー