妊娠・出産期も要注意若いうちの生活習慣がカギになる骨粗鬆症の予防

妊娠・出産期も要注意
若いうちの生活習慣がカギになる骨粗鬆症の予防

骨の量と質が低下する骨粗鬆症は、高齢者の骨折の大きな要因となるものです。高齢になってからの骨折は寝たきりの原因になることから、強い骨をつくり、維持することは健康寿命を延ばす重要なポイントとなります。骨を強く保てるかどうかは、思春期からの生活習慣が重要となります。今回は、骨の健康を保つ生活習慣について紹介します。

骨粗鬆症の原因は? 高齢者だけの病気なの?

骨粗鬆症は、WHO(世界保健機関)によって「骨量低下と骨組織の微細構造の異常を特徴として、骨の脆弱性が増し、骨折リスクが高まった状態」と定義されています※1。「骨量」の減少と「骨質」の低下によって、骨が弱くなり、わずかな力でも骨折しやすい状態にあるということです。この「骨量」と「骨質」が骨の健康を維持するうえで重要となります(図1)。

 

図1 骨の健康に重要な「骨量」と「骨質」
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骨量とは、骨の成分であるカルシウムやマグネシウム、リンなどのミネラル成分の量のことで、単位面積あたりの骨量のことを「骨密度」といいます。骨質とは骨を支える鉄筋のような役割をするコラーゲンで、骨の強さを決めるのは、約70%が骨量(骨密度)、約30%が骨質といわれています※2

骨量のピークは20歳

骨の量がもっとも増えるのは思春期前半から中期にかけてで、そのピークは20歳ごろといわれています。以降は維持、または緩やかに骨量は減少していきますが、40歳代に入って卵巣機能が低下しはじめます。さらに閉経が近づき、女性ホルモンのエストエロゲンの分泌が急激に低下すると、骨量は急激に減っていきます(図2)※3

 

図2 年齢による骨量(骨密度)の変化
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女性ホルモンのエストロゲンは、古い骨を吸収する破骨細胞と新しい骨をつくる骨芽細胞に作用しています。エストロゲンの分泌量が急激に少なくなることで古い骨の吸収を抑制する作用が弱まる一方で、新しい骨をつくる細胞の働きが低下するため、骨量が減少しやすくなります。

 

骨量に問題がなくても、骨質が低下していると骨粗鬆症のリスクになります。骨質を維持するために重要とされている成分のひとつがコラーゲンというタンパク質です。皮膚によいとされるコラーゲンですが、骨にとっても重要な成分なのです。

若い世代の急激なダイエットは将来の骨折リスクに

思春期には自分の体重を気にして“やせたい”と思うばかりに急激なダイエットをしてしまう人もいます。しかし、思春期は骨量を増やす大事な時期でもあり、急激なダイエットで栄養が不足すると中高年以降の健康リスクになります。

出産後の一時的なホルモンバランスの乱れにも注意

骨粗鬆症は「高齢者の病気」と思われがちですが、出産後の女性が発症するケースもあります。妊娠中や出産後の授乳で母体から子どもへ栄養が送られるたことで、一時的に骨がもろくなりやすくなります。これを妊娠後骨粗鬆症といいます。この妊娠骨粗鬆症の人のなかには、まれではありますが、腰の骨折を起こすことがあります。

 

出産後に骨折をした人を調べた研究報告によると、骨粗鬆症の原因となるほかの病気がないにもかからず、産後3カ月以内に椎体骨折(背骨の骨折)をした女性は出産前の骨量低下があったといいます※4。そのため、出産後の骨折を防ぐには、若いうちにしっかり骨づくりをしておくことが重要となります。

妊娠・出産期のやせが子どもの骨粗鬆症リスクに

また、妊娠や出産期にやせている女性は、低出生体重児(生まれたときの体重が2,500g未満)の出産率が高くなることがわかっています。小さく生まれた子どもは、思春期に増加する骨量のピークが低くなるといわれており、女児の場合は卵子のもとになる原子卵胞の数が少なくなって閉経年齢が早くなるとされています。そのため、体重2,500g未満で生まれた子どもは、骨粗鬆症リスクが高くなる可能性があります※5

骨を強くして骨量を増やす運動

骨粗鬆症のリスク因子には、避けられるものと避けられないものがあります(表1)※6


表1 骨粗鬆症のリスク因子

避けられるリスク因子 避けられないリスク因子
  • 栄養不足(カルシウム、ビタミンD、ビタミンK)
  • 栄養素の過剰摂取(リン、食塩)
  • 極端なダイエット
  • 運動不足
  • 日照不足
  • 喫煙、過度の飲酒、多量のコーヒー摂取
  • 年齢(加齢)
  • 性別(女性)
  • 人種
  • 家族歴
  • 初潮が遅い
  • 早期閉経
  • 過去の骨折

 

加齢や性別、人種などのように、自らが意識しても除去できないものはありますが、それ以外の因子をできるだけ減らすことが、将来の骨粗鬆症の発症やそれに伴う骨折のしやすさ、骨折による寝たきりなどを防ぐことにつながります。

 

強い骨をつくるためには、子どものころからの生活習慣が重要です。運動は、骨をつくる細胞の働きを活発にさせる効果があるため、適度な運動で骨の細胞を刺激することが大切。骨を強くする運動は、負荷があるほうがよいといわれており、水泳のように負荷が少ない運動よりは、ウォーキングやジョギングなどのほうがよいといわれています。軽いダンベルを持ったダンベルウォーキングのように、負荷を加えて行う運動も効果的でしょう。ただし、負荷をかけすぎる運動は、怪我の原因にもなるため気をつけて行います。腰や膝などに痛みがある人は、医師に相談のうえ行うようにしましょう。

喫煙や過度な飲酒は骨折リスクに

喫煙や過度な飲酒は骨折リスクを高めるといわれています。骨粗鬆症があるとそのリスクはさらに高くなり、将来の寝たきりの原因となりえます。禁煙をするとともに、飲酒はエタノール量で1日24g未満(ビール中瓶1本/日本酒1合)までにとどめましょう。

骨粗鬆症の予防につながる食べ物

骨量を維持するためには、カルシウムをはじめとするミネラル成分を食事からきちんととることが大切です。食事からとったカルシウムが骨に取り込まれることで新しい骨がつくられ、古くなって壊された骨からカルシウムが溶け出します。日々つくられる骨の健康を維持するためには、一度に多くのカルシウムをとるのではなく、毎日の食事でしっかりと補いましょう。また、食事からとったカルシウムの吸収を促進するビタミンDや骨にカルシウムを取り込む助けとなるビタミンKなどもバランスよくとることが大切です(表2)。

 

表2 骨の健康に役立つ主なビタミン・ミネラル

栄養素 骨に対する働き 成人女性の摂取目安量 多く含まれている食材
カルシウム 骨や歯の主要な構成成分 650mg/日(15〜74歳)
※推奨量
牛乳・乳製品、魚介類、藻類など
ビタミンD 腸管からのカルシウム吸収や腎臓でのカルシウム再吸収を促進する 8.5μg/日(15歳以上) きのこ類、魚介類、卵類など
ビタミンK タンパク質を活性化してカルシウムに骨を沈着させて骨形成を促す 150μg/日(15歳以上) 納豆、海藻、緑黄色野菜(しそ、モロヘイヤなど)など

ただし、「骨の健康によいから」といって、特定の栄養素を多くとりすぎることで別の病気や症状が出ることがあります。1日3食のなかでさまざまな食材からバランスよく栄養をとることを心がけましょう。そのなかで牛乳や乳製品などのカルシウムが豊富な食材を毎日とり入れるなどの習慣をつけることが、骨の健康の維持につながります。

 

ビタミンDは、食事からとる以外にも日光浴によって皮膚で生成されます。ビタミンD生成においては、1日15分程度が必要とされていますが※1、長時間強い紫外線のもとで過ごすことは光老化や皮膚がんの原因にもなるため、注意が必要です。

ここがポイント!

  • 骨粗鬆症とは、骨量低下と骨組織の微細構造の異常を特徴として、骨の脆弱性が増し、骨折リスクが高まった状態である
  • 骨の量がもっとも増えるのは思春期前半から中期にかけてで、そのピークは20歳ごろ
  • 骨量が増える思春期からの過度なダイエットは将来の骨粗鬆症リスクになる
  • 強い骨をつくるには、子どものころからの適度な運動、栄養バランスのよい食事などの生活習慣が重要

引用・参考資料

※1 Assessment of fracture risk and its application to screening for postmenopausal osteoporosis. Report of a WHO study group. WHO technical report series 1994, 843.

※2 (日本骨粗鬆症学会、日本骨代謝学会、骨粗鬆症財団)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版

http://www.josteo.com/ja/guideline/doc/15_1.pdf(2023年5月15日閲覧)

※3 日本内分泌学会:閉経後骨粗鬆症

http://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=51(2023年5月15日閲覧)

※4 宮本健史、宮越敬ほか:妊娠や授乳に伴う骨の代謝的プロファイルの変化(Changes in bone metabolic profile associated with pregnancy or lactation)

https://www.nature.com/articles/s41598-019-43049-1(2023年5月15日閲覧)

※5 Cooper C, Harvey N, Cole Z, Hanson M, Dennison E. Developmental origins of osteoporosis: the role of maternal nutrition. Adv Exp Med Biol , 646: 31-39, 2009.

※6 厚生労働省e-ヘルスネット:骨粗鬆症の予防のための食生活

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-007.html(2023年5月15日閲覧)

 

・骨粗鬆症財団/福島秀興監:お母さんのやせは次世代の骨粗鬆症リスクを高めます~丈夫な骨づくりは胎児のうちから始まります~

https://www.jpof.or.jp/Portals/0/images/publication/notebook/宝くじ2020kotsuso1104.pdf(2023年5月15日閲覧)

・骨粗鬆症財団/折茂肇監:丈夫な骨があなたの将来を支えます 骨の健康、考えてますか?

https://www.jpof.or.jp/Portals/0/images/publication/honekenko_2017.pdf(2023年5月15日閲覧)

・骨粗鬆症財団/田中弘之監:骨粗鬆症の予防は成長期から―骨が育つ思春期までを大切に過ごす―

https://www.jpof.or.jp/Portals/0/images/publication/pamphlet_growing.pdf(2023年5月15日閲覧)

・厚生労働省e-ヘルスネット:骨粗鬆症予防のための運動―骨に刺激が加わる運動を

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-05-001.html(2023年5月15日閲覧)

・厚生労働省e-ヘルスネット:健康用語辞典 骨密度

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-027.html(2023年5月15日閲覧)

・東浩太郎:骨粗鬆症診療の進歩:2019 1.骨粗鬆症発症のメカニズム.日本老年医学会誌,56:116-123,2019.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/56/2/56_56.116/_pdf/-char/ja(2023年5月15日閲覧)

・健康長寿ネット:骨粗鬆症 骨粗鬆症のケア

https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/kotsu-soshoushou/yobou.html(2023年5月15日閲覧)

・「日本人の食事摂取基準」策定委員会:日本人の食事摂取基準(2020年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書.

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf(2023年5月15日閲覧)

・健康長寿ネット:ビタミンKの働きと1日の摂取量

https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-k.html(2023年5月15日閲覧)

・健康長寿ネット:ビタミンDの働きと1日の摂取量

https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-d.html(2023年5月15日閲覧)

・健康長寿ネット:カルシウムの働きと1日の摂取量

https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/mineral-ca.html(2023年5月15日閲覧)

吉丸真澄(よしまる ますみ)

吉丸真澄
(よしまる ますみ)

吉丸女性ヘルスケアクリニック院長
https://yoshimaru-womens.com/
金沢大学医学部卒業後、国立病院機構東京医療センター、東京歯科大学市川総合病院に勤務。2012年に東京歯科大学市川総合病院産婦人科助教に就任。2020年に吉丸女性ヘルスクリニックを開業。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医、日本抗加齢医学会認定抗加齢専門医、日本医師会認定健康スポーツ医、NR・サプリメントアドバイザー