高血圧の予防は減塩から始めよう
──低糖質・高タンパク質・減塩の簡単レシピも紹介
塩分のとりすぎは高血圧の大きな要因のひとつです。厚生労働省の「国民健康・栄養調査(令和元年)」によると、食塩摂取量の平均値は男性で10.9g、女性で9.3gとなっています※1。この10年でみると、横ばいから微減となっていますが、厚生労働省の「健康日本21(第二次)」の目標値8g※2までは約2gの減塩が必要といえます。また、高血圧などの病気で治療を受けている人はさらなる減塩が求められます。
塩分のとりすぎは、心臓や血管などに負担をかけるだけでなく、がんリスクを高めることもわかっています。将来の健康のために、手間なく減塩を実現するコツや、塩分を控えてもおいしいレシピを紹介します。
なぜ塩分のとりすぎで病気になるのか
塩分の多い食事の後はのどが渇いて水を飲みたくなるものです。これは、体内の水分と塩分の濃度を一定に保つ身体のしくみによるものです。しかし、水を多くとりすぎると、体内に水分がため込まれ、心臓に送られる血液の量が増えて血管に強い圧力がかかります。
さらに血圧が高い状態が続くと、血液をろ過して老廃物を排泄する腎臓に負担がかかります。これが腎臓機能の低下を招き、血液のろ過や老廃物の排泄機能が追いつかなくなって、血圧が常に高い状態になってしまうのです。
また、国立がん研究センターの研究報告(JPHC研究)により、塩鮭や塩鱈などの塩蔵魚類や干物、たらこなどの塩蔵食品を多くとる人は、がんリスクが高いこともわかっています※3。がんや心臓・血管の病気を予防するうえで、減塩は避けて通ることができないポイントといえるでしょう。
手間なし減塩は調味料から
「減塩しなければいけないことはわかっているけれど、味気がなくなるのは嫌だし、計量も面倒」という人は、まず「手間なし減塩」から始めましょう。
「国民健康・栄養調査(令和元年)」の食塩摂取量の平均値10.1gと、健康日本21の目標値8gの差は約2gです。日本人の塩分摂取の約7割がみそやしょうゆなどの調味料類からといわれおり※4、これを「減塩タイプ」の調味料に変えることで食塩摂取量を減らすことができます。日本高血圧学会が公開している「減塩食品リスト」を参考にしましょう※5。
とくに塩分量が多い調味料は、塩、コンソメ(顆粒、固形)、しょうゆ、みそ、オイスターソースなどです。これらの食塩量が多い調味料を中心に減塩タイプを使用しましょう。ただし、減塩タイプだからといって使う量が増えてしまえば総摂取量は増えてしまうので注意が必要です。しょうゆなどは「かける」のではなく、「つけて」食べる、またはスプレータイプのしょうゆさしに変えるだけでも効果があります。
また、すでに高血圧などの治療を受けている人で、1日あたりの塩分摂取量について指導を受けている人は、その指示を守りましょう。
つくって食べておいしい減塩食レシピ
食塩を使わないねぎ塩ダレがポイント!
〇低糖質、高蛋白質、減塩に!鶏むね肉のねぎ塩ダレ
レシピ制作・撮影:田村佳奈美先生(福島学院大学短期大学部食物栄養学科講師)
1人分:224kcal、タンパク質:24.5g、脂質:10.0g、炭水化物:10.0g、食物繊維:1.3g、塩分:0.5g
【材料 2~3人分】
鶏むね肉(大)・・・・・・1枚(300g)
粗びきコショウ・・・・・・適量
料理酒(食塩不使用)・・・大さじ3(45g)
みりん・・・・・・・・・・大さじ2(36g)
長ねぎ・・・・・・・・・・1本(90g)
ごま油・・・・・・・・・・大さじ2(24g)
レモン汁・・・・・・・・・小さじ2(18g)
鶏ガラだし(粉末)・・・・小さじ1(3g)
・つけ合わせ
サマーレタス・・・・4枚
ミニトマト・・・・・6ケ
【作り方】
- ①鶏むね肉は皮と脂肪をとりのぞき、粗びきコショウを多めに両面にふる
- ②鍋に鶏むね肉を入れ、酒、みりんをふりかけて約10分置く
- ③鍋を火にかけてフタをし、湯気が立ってきたら強火で1分、中火にして3〜4分加熱する。
肉をひっくり返してさらに中火で3〜4分火を通す。
フタを開けずに約1時間置き、余熱で火を通す(時間が無い場合は中火で火を通す時間を長めにする)。 - ④長ねぎを細かく刻んでボウルに入れ、ごま油、レモン汁、鶏ガラだしを加えてよく混ぜておく
- ⑤粗熱がとれたら鶏肉を取り出して薄くスライスし、レタス、ミニトマトと一緒に盛りつけ、④のねぎ塩ダレを上からかける
- *粗びきコショウとごま油、レモン汁の風味で、減塩でもおいしく食べられます
- *下味にもタレにも塩は使わず、料理酒も食塩不使用のものを使うことで、減塩効果が高いレシピです
- *酒をふりかけてなじませることで、鶏肉がやわらかくなります
- *鶏肉は火を通しすぎるとパサパサして硬くなるので余熱を上手に利用しましょう
- *ラー油を加えると辛味が加わり、おつまみにもなります
- *肉の厚みや大きさによって火が通っていない場合は電子レンジで1~2分加熱しましょう
- ・食塩のとりすぎは、心臓や血管などに負担をかける
- ・塩蔵魚や干物、たらこなどの塩蔵食品のとりすぎはがんリスクを高める
- ・血圧が高いと腎臓に負担がかかり高血圧の状態が続く負のスパイラルを招く
- ・減塩調味料などを上手に活用して塩分摂取は1日8g未満に
- ・粗びきコショウやごま油、レモン汁などの風味豊かな調味料を使うことで減塩でもおいしく食べられるメニューになる
【減塩・調理のポイント】
ここがポイント
引用・参考資料
※1 厚生労働省:国民健康・栄養調査(令和元年)結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf(2022年2月14日閲覧)
※2 厚生労働省:健康日本21(第二次)国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/kenkounippon21_01.pdf(2022年2月14日閲覧)
※3 国立がん研究センターがん対策研究所予防関連プロジェクト:多目的コホート研究(JPHC study)塩分・塩蔵食品と、がん・循環器疾患の関連について
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/380.html(2022年2月14日閲覧)
※4 e-ヘルスネット:調味料の上手な使い方
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-03-016.html(2022年2月14日閲覧)
※5 日本高血圧学会: JSH減塩食品リスト(減塩食品のご紹介とホームページのご案内)
https://www.jpnsh.jp/data/salt_foodlist.pdf (2022年2月14日閲覧)
厚生労働省:e-ヘルスネット 栄養・食生活と高血圧
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-002.html(2022年2月14日閲覧)
厚生労働省:e-ヘルスネット 高血圧
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-003.html(2022年2月14日閲覧)
田村佳奈美
(たむら かなみ)
福島学院大学短期大学部食物栄養学科講師
http://www.fukushima-college.ac.jp/
福島女子短期大学(現:福島学院大学短期大学部)食物栄養科卒業。1993年に管理栄養士の資格を取得し、福島労災病院でNSTディレクターなどを務める。現在は福島学院大学短期大学部食物栄養学科講師として学生の指導に携わるほか、医療機関での患者指導の経験を活かし、クリニックや調剤薬局での栄養指導、「食」「健康」に関わる講演活動など、幅広く活躍している。