いまさら聞けない!? ミネラルの効果と不足のリスク

いまさら聞けない!? ミネラルの効果と不足のリスク

ミネラルは、体内で合成することができないものですが、人が生きていくうえで欠かせないものであり、不足すると病気のリスクがあります。ミネラルとは身体にとってどのような役割を果たしているのか、ミネラル不足が招く主な病気のリスクと補充に役立つ食材などを紹介します。
 

 

ミネラルの種類と役割

ミネラルは身体を構成する酸素や炭素、水素、窒素以外の元素の総称で、無機質ともいいます。そのなかでも非常に少量しかないものを微量元素と呼びます。代表的なものに鉄、亜鉛、カルシウム、リン、カリウムなどがあります。ミネラルは身体でつくり出すことができないため、食事から摂取する必要があります。また、相互に吸収やはたらきに影響するのが特徴で、バランスよく摂取することが重要です。

 

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、多量ミネラルとしてナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、微量ミネラルとして、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデンの微量元素の基準が設定されています(表1)。

 

表1 食事摂取基準(例:30~49歳女性)

種類

推定平均必要量

推奨量

目安量

目標量

耐容上限量

ナトリウム

(mg/日)

600(食塩相当量1.5g/日)

(食塩相当量6.5g/日未満)

カリウム

(mg/日)

2,000

2,600以上

カルシウム

(mg/日)

550

650

2,500

マグネシウム

(mg/日)

240

290

リン(mg/日)

800

3,000

鉄(mg/日)

7.5
(月経あり)

10.5
(月経あり)

亜鉛(mg/日)

6.5

8.0

35

マンガン

(mg/日)

3.0

11

ヨウ素(μg/日)

100

140

3,000

セレン(μg/日)

20

25

350

クロム(μg/日)

10

500

モリブデン
(μg/日)

20

25

500

【出典】厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316585.pdf

 

摂りすぎに注意「ナトリウム」

ナトリウムは体内の水分量を一定に保つ役割があります。普段の食事から必要量が摂取できるため、腎臓の機能が正常であれば、ナトリウム欠乏になることはありません。反対に摂りすぎることで高血圧のリスクが高くなるため、摂りすぎに注意が必要なミネラルです。
 

ナトリウムを排出する「カリウム」

カリウムはナトリウムを排出する作用があり、細胞内液の浸透圧を調整します。健康な人では不足することはほとんどありませんが、下痢や大量の発汗、高血圧の治療で利尿薬という薬を服用している人は注意しましょう。
 

身体にもっとも多く存在する「カルシウム」

人の身体にもっとも多く存在するミネラルがカルシウムです。歯や骨をつくるミネラルで、ごく一部はカルシウムイオンとして血液や筋肉のなかにも存在しています。若年期に不足すると骨が十分につくられず、将来の骨粗鬆症リスクを高めます。カルシウムだけでなくビタミンDを一緒に摂ることで吸収率が高まります。
 

歯や骨の形成に必要な「マグネシウム」

マグネシウムはカルシウムやリンとともに歯や骨をつくる役割があるほか、代謝に必要な酵素のはたらきを助け、体温や血圧の調整、神経の情報伝達にも使われているミネラルです。通常の食事で欠乏することはほとんどありませんが、欠乏すると骨の形成などに影響します。
 

細胞膜やエネルギーをつくるのに必要な「リン」

リンは、骨や歯に「リン酸カルシウム」「リン酸マグネシウム」として、カルシウムに次いで多く存在するミネラルです。細胞膜などの構成成分で、エネルギーをつくり出すATPと呼ばれる化合物にも必要なミネラルです。ただし、摂りすぎはカルシウムの吸収の妨げになるため、注意しましょう。
 

微量ミネラルも重要

鉄は全身に酸素を送る血液中のヘモグロビンに多く存在しているほか、筋肉や肝臓などに存在します。そのため、鉄分が不足すると赤血球のヘモグロビンが減少してしまい、全身に十分な酸素を送り出すことができなくなり、鉄欠乏性貧血になります。鉄はヘム鉄と非ヘム鉄があり、吸収が良いのは動物性食品に多いヘム鉄です。

 

亜鉛は皮膚や肝臓、すい臓、前立腺などの多くの臓器に必要な微量栄養素で、成長期に不足すると成長障害が起こります。また、亜鉛が不足することで味覚障害や脱毛や貧血、皮膚炎などが起こります。

 

このほか、銅は骨や血液、脳などに必要な成分で、マンガンも代謝に必要なミネラルです。このように、多量ミネラル、微量ミネラル問わず、ミネラルは人が生きていくうえで必要なもので、不足するとさまざまな影響が出ます。
 

ダイエットしたい……でもミネラルが不足すると

肥満を解消するためにダイエットする場合、やはり効率的なのは運動と食事の両輪で見直しすることです。多くのミネラルは通常の食事をしていて不足することは稀ですが、過剰な食事制限によって身体を構成する必要な栄養素が不足してしまう恐れもあります。

 

たとえば鉄は赤血球のヘモグロビンに多く存在する微量ミネラルです。ヘモグロビンは全身に酸素を送る重要なはたらきをしているため、鉄が不足してもすぐに影響が出ないように肝臓などに貯蔵鉄と呼ばれる鉄が蓄えられています。そのため自覚症状がないまま、鉄欠乏が進んでいることも少なくありません。女性は生理があり、鉄が不足しやすいため、とくにダイエット中や成長期は鉄不足に注意しましょう。
 

ダイエット効果を高めるためにもミネラルは不可欠

また、ミネラルは代謝にも欠かせない栄養素です。不足することでせっかくのダイエット効果が十分に得られなくなり、やせにくい身体になってしまいます。これはビタミンも同様で、栄養素がその役割を発揮するためには、相互のバランスがとれていることが重要です。ダイエット中でもエネルギー代謝の効率を下げないために、ミネラル、ビタミンともにしっかり摂ることを心がけましょう。

 

とくに若年層で骨が成長する時期のダイエットは医師や管理栄養士などの適切な指導のもとに行いましょう。骨をつくるために必要なミネラルが不足すると、将来の健康にも影響します。
 

ミネラルの多い食べ物は?

ミネラルは、さまざまな食材に含まれています(表2)。

 

表2 ミネラルが多く含まれる食材

ミネラル

豊富な食材

カルシウム

牛乳、ヨーグルト、チーズ、大豆製品など

カリウム

刻み昆布、ほしいも、切り干し大根、生野菜、果物(とくにバナナ)など

リン

卵黄、魚類、牛乳、ヨーグルト、チーズなど

レバー、あさり、カツオ、菜の花、小松菜など

亜鉛

牡蠣、豚レバー、うなぎ、ズワイガニ缶詰、焼きのり など

 

バランスよく多くの食材から栄養を摂ることを心がければ、不足することはほとんどなく、過剰摂取の心配もありません。ただし、ナトリウムに関しては、通常の食事をしていても目標値よりも多く摂取している人が多く、それが高血圧の原因となります。日本はしょうゆや味噌など、塩分が多い調味料を多く使う食文化があります。食材自体にもナトリウムは含まれているため、味つけの調味料の使いすぎには注意しましょう。

 

ここがポイント!

・ミネラルは体内で合成することができないが、人が生きていくうえで欠かせない栄養素

・ナトリウムやカリウムは体内の水分量をバランスよく保つために必要なミネラル

・カルシウムやマグネシウム、リンは骨をつくる重要な成分

・過度なダイエットによるミネラル不足は、やせにくい体質になる原因になることも

・ミネラルはさまざまな食材に含まれているため、バランスよく摂ることが重要



 

〈参考資料〉

・厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書

 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316585.pdf

(2025年2月14日閲覧)

・e-ヘルスネット:健康用語辞典 栄養・食生活

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionaries/food

(2025年2月14日閲覧)

・健康長寿ネット:健康長寿とは 栄養素

https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/index.html

(2025年2月14日閲覧)

・厚生労働省:働く女性の心とからだの応援サイト 女性特有の健康課題 貧血・かくれ貧血

https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/anemia.html

(2025年2月14日閲覧)

 



田村佳奈美(たむら かなみ)

田村佳奈美
(たむら かなみ)

福島学院大学短期大学部食物栄養学科准教授

http://www.fukushima-college.ac.jp/

福島女子短期大学(現:福島学院大学短期大学部)食物栄養科卒業。1993年に管理栄養士の資格を取得し、福島労災病院でNSTディレクターなどを務める。現在は福島学院大学短期大学部食物栄養学科准教授として学生の指導に携わるほか、医療機関での患者指導の経験を活かし、クリニックや調剤薬局での栄養指導、「食」「健康」に関わる講演活動など、幅広く活躍している。