寒さが本格化する前から乾燥肌を防ぐケアを始めましょう

寒さが本格化する前から乾燥肌を防ぐケアを始めましょう

冬は屋内外ともに乾燥しやすく、それに伴う皮膚トラブルも増加します。原因となる乾燥を防ぐためには日ごろのスキンケアによる保湿が重要です。保湿効果を高めるためのスキンケアのポイントを紹介します。
 

 

乾燥した肌はかゆみの原因に

皮膚は、人の身体の表面を覆っている臓器で、外部から内臓や器官を守って体温を調節したり、水分や体液が失われたりしないようにするなど、多くの働きがあります。こうした皮膚の機能が低下する原因のひとつが乾燥です。

 

皮膚は、外部から順に表皮、真皮、皮下組織と大きくわけて3つの層からなっています。そのなかで表皮は外部と接しており、外部からの異物の侵入や水分の蒸散を防ぐ重要な役割がある一方、非常に薄い膜でできているため、外部の環境の影響を受けやすくなっています。
 

うるおいを保つ表皮の働き

表皮は角層、顆粒層、有棘層、基底層の4層でできています。このうちもっとも外側にある角層は、わずか0.02mm程度のごく薄い膜でできています。角層には天然保湿因子、細胞間脂質があり、皮脂とともに外部の刺激から身体を守るバリア機能、水分の蒸発を防いでうるおいを保つ役割を担っています。
 

皮膚が乾燥すると……

このバリア機能や保湿機能が低下すると水分が蒸発しやすくなり、皮膚の乾燥が進みます。皮膚が乾燥すると、つっぱったりかさつきを感じるだけでなく、白く粉が吹いたようになったり、皮がむけたりして剥がれ落ちることがあります。これは表皮のバリア機能が低下していることの現れで、外部からの刺激に弱くなり、異物が入り込んでかゆみなどのトラブルを起こします。

乾燥が原因となるもののひとつに皮脂欠乏性湿疹があります。皮膚の乾燥が原因でかさついて剥がれ落ちたり、ひび割れを起こしたりするもので、かゆみが出て皮膚を掻いてしまうと湿疹ができます。
 

皮膚の乾燥を防ぐ洗い方のポイント

人は加齢とともに皮膚表面の脂質量が減少していきます。さらに空気が乾燥したり寒い環境にいることで皮膚のバリア機能が低下していき、乾燥が進みます。

 

また、皮膚の洗いすぎ、熱いお湯での入浴、石けんを多く使うといったスキンケアの方法も皮膚の乾燥を進行させる要因となります。乾燥から皮膚を守るためには、環境の整備やスキンケアが重要となります。
 

洗い方はメリハリが大事

皮脂の分泌量は個人差、年齢差がありますが、においを気にしてゴシゴシ洗いをしてしまう人が少なくありません。しかし、それはバリア機能が低下する要因になります。湯船に浸かることでも余分な皮脂はある程度除去できるため、洗うときには洗浄剤(ボディソープなど)を十分に泡立てて手でやさしくなで洗いをする程度にとどめましょう。

とくに乾燥しやすい顔や脛やひざ、肘などは洗いすぎがトラブルの原因になります。乾燥が気になるときには洗浄力が強い洗浄剤を避け、敏感肌用、乾燥肌用などの表示があるものを選ぶなどの工夫をしましょう。
 

顔の乾燥対策は?

顔も外部の環境による影響を受けやすい部位です。年齢とともに乾燥しやすくなるため、皮脂を守りながら清潔を保つことが重要です。

 

ただし、乾燥を気にするあまり洗浄剤の使用を避けていると、ほこりや汚れ、アレルギーの原因物質などを洗い流すことができず不潔になることがあります。洗顔料をしっかり泡立てて泡で包み込むようにして洗いましょう。ゴシゴシ洗うとそのときはさっぱりしたように感じますが、皮膚表面の水分が蒸発するときに表皮の水分も一緒に蒸発してしまい、より乾燥が進む原因となります。
 

生活習慣の改善

生活リズムが乱れたり、ストレスが多い生活は皮膚トラブルの原因となることがあります。また、適度な発汗は皮膚のうるおいを保ちます。冬も生活に運動を取り入れましょう。生活習慣の見直しは中高年以降に増加する生活習慣病の予防においても重要ですが、皮膚の乾燥を防いで健やかさを保つことにもつながります。
 

室内環境の見直し

冬は屋外だけでなく室内も乾燥しがちです。湿度は40〜60%を保つように加湿器などを活用しましょう。
 

冬でも紫外線ケアが重要

皮膚への刺激を避けるという点でも重要なのが紫外線ケアです。外出時はもちろん、室内でも日焼け止めを塗るなどして紫外線から皮膚を守りましょう。

 

保湿効果を高めるスキンケアのやり方

乾燥を防ぐためには日ごろのスキンケアでしっかりと保湿をすることが重要です。化粧水や保湿クリームなどの保湿剤は、自分に合うものを選ぶことだけでなく、十分な量を使うのがポイントです。天然保湿因子の構成成分であるアミノ酸類や細胞間脂質のひとつであるセラミドなどの成分が配合されているもの、水に溶けやすく水分を保持する機能を持つヘパリン類似物質を配合している化粧品などは保湿力が高いとされています。また、尿素成分が配合されている薬用クリームやローションは、角層をやわらかくして水分を保持する効果が期待できます。また、皮膚表面に油膜を形成して水分の蒸発を抑えることで角層の水分量を増やす効果が期待できるものにワセリンなどの保湿剤があります。

 

とくに乾燥する冬場には入浴後や洗顔後、すみやかに水分を拭き取ってすぐにスキンケアをしましょう。時間の経過とともに皮膚からはどんどん水分が蒸発してしまいます。

 

スキンケア製品は使い方も大切

皮膚を洗うときにもこするのが刺激になってしまうように、化粧水や乳液、クリームなどをつけるときにも摩擦による刺激を避けることが大切です。化粧水や乳液は適量(500円玉程度)を手のひらに出し、皮膚になじませたら手で包み込むようになじませましょう。化粧水を顔につけるときに手でパン、パンと叩くようにつけるのは皮膚への刺激となってしまいます。

 

身体に乳液やクリームを塗るときにも乳液なら500円玉程度、クリームなら人差し指関節1つ分の量を出して皮膚になじませます。腕に塗る場合には指先から肘までを1ブロックとして、人差し指関節1つ分の量のクリームを使います。縦方向になじませたら横方向にもやさしくなじませましょう。
 

皮膚トラブルがある場合には速やかに受診を

毎日のスキンケアや生活習慣の改善によって皮膚の乾燥によるトラブルは起こりにくくなります。ただし、「保湿が大事だから」と、過剰なスキンケアを行ってしまうと逆効果になることもあります。

 

すでに皮膚の乾燥が進んでトラブルが起きている場合には皮膚科を受診して治療を受けることが重要です。湿疹などが出ている場合、自己判断でケアを続けてしまうと悪化する原因になることがあるので注意しましょう。
 

ここがポイント!

・皮膚の角層には天然保湿因子、細胞間脂質があり、皮脂とともに外部の刺激から身体を守るバリア機能、水分の蒸発を防いでうるおいを保つ役割がある

・バリア機能が低下すると水分が蒸発しやすくなって皮膚の乾燥が進み、皮膚がむけてはがれ落ち、異物が入り込みやすくなる

・乾燥が進む原因となる入浴時のゴシゴシ洗いは避け、十分な量のローションやクリームを使ってこまめに保湿する


<参考資料>

・日本皮膚科学会:日本皮膚科学会診療の手引き 皮脂欠乏症診療の手引き2021

https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/131_2255.pdf

(2024年9月13日閲覧)

・東京都福祉保健局:健康・快適居住環境の指針―健康を支える快適な住まいを目指して― 冬の住まい方

https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kankyo//kankyo_eisei/jukankyo/indoor/kenko/sisin_bunsatuban.files/web_fuyu_sumaikata_kenkai_sisin.pdf

(2024年9月13日閲覧)

・マルホ株式会社:もっと知ろう! 乾燥肌

https://www.maruho.co.jp/kanja/dryskin

(2024年9月13日閲覧)

久山倫代(くやま みちよ)

久山倫代
(くやま みちよ)

愛媛大学医学部卒業後、岡山大学病院等勤務を経て、同大学皮膚科助手、川崎病院皮膚科副医長、金光病院皮膚科部長などを歴任。