歯のクリーニングと歯周病予防 健康で白い歯を保つ毎日のケア

歯のクリーニングと歯周病予防 健康で白い歯を保つ毎日のケア

外から目で見ることができない血管や臓器とは異なり、歯は自分自身やまわりの人たちが見ることができる臓器のひとつであるため、見た目に大きく影響を与えるといわれています。また、歯の疾患はさまざまな全身疾患に影響を与えることがわかっており、口腔内の健康状態を良好に保つことはさまざまな病気の発症を防ぐことにつながると考えられています。そこで今回は、見た目と病気の予防に重要である歯のクリーニングと歯周病予防について紹介します。
 

 

健康な口元とアンチエイジング効果

健康な口元は見た目年齢にも影響するといわれています。「歯の着色汚れが気になって人と話すのが不安」という人もいるのではないでしょうか。健康でケアが行き届いた歯は口を開くことへの不安を軽減させ、表情を豊かにします。見た目は第一印象に大きく影響するといわれますが、健康な口元や白い歯を維持することはコミュニケーションにおいても重要なポイントになるといえるでしょう。
 

歯の着色・変色の原因

歯の着色・変色の原因は、外からとった色素が歯に沈着するもの(外因性変色)と歯の内側(歯のなかの神経)から生じるもの(内因性変色)とに分類できます。

外因性変色にはプラーク、歯石の沈着、食品・嗜好品のなかの色素の沈着などがあり、原因物質の摂取を制限すること、ブラッシングによる日常の口腔内の清掃を徹底すること、歯科での歯の研磨によって色調が改善する可能性があります。

 

内因性変色は加齢によるもの、歯の神経の変性などによるもの、不適切な歯のなかの神経をとる治療などによるもの、薬剤によるもの、全身疾患によるものなどがあげられます。ここでは主に外からとった色素が歯に沈着する外因性変性について紹介します。
 

歯の着色(外因性変性)の原因

歯の着色の原因は、主に飲食物や嗜好品の色素と歯の表面にあるペリクルという唾液由来の糖タンパクが結合したものです。着色汚れが気になるときには研磨剤が入った歯みがき粉でブラッシングすることで、ある程度着色汚れを取り除くことができます。

 

ただし、加齢とともに徐々に歯の外側を覆うエナメル質がすり減り、内側の黄色い象牙質が厚くなっていくため、ケアをしていても黄色くなっていくことを完全に防ぐことは難しいといえます。
 

歯の着色汚れを落とすには

歯科医院で保険診療による歯のクリーニングは、歯周病の原因となる歯石の除去や、専門の回転するブラシやラバーチップと研磨剤を使用(歯面研磨)して落ちる着色汚れが対象となります。ブラシや研磨剤では落ちない着色汚れはホワイトニング(ブリーチ)となるため、自費診療となるので注意しましょう。自費診療の歯のホワイトニングを受ける場合も、事前に虫歯や歯周病の治療を受けておく必要があります。

 

近年、歯科医院以外のエステサロンなどでも歯のホワイトニングのサービスを提供している場合がありますが、これらは医薬部外品などを使ったもので、歯科医院で受けられるホワイトニングとは異なります。歯の漂白効果があるホワイトニング用の薬剤を使った処置は歯科医師やその指示を受けた歯科衛生士でなければできないので注意しましょう。
 

目的や希望に合わせた選択肢も

歯科医院やエステサロンで行われているホワイトニング処置に比べて短期間で効果はなくなりますが、コート材を使ったホワイトニング方法もあります。特別なときだけでも歯を白くしたい場合などに利用するのもよいでしょう。歯を削り、かぶせて白く見せる方法もあります。歯の色に悩んでいる人は費用面も含めて歯科医院で相談しましょう。
 

歯周病菌の原因と対策

歯を健康に保つために最も重要になるのが歯の病気を防ぐことです。歯の2大疾患といわれているのがむし歯と歯周病です。

 

むし歯は原因となるミュータンス菌などの菌が口のなかの糖を餌にして酸を発生させ、歯を溶かしてしまう病気です。一方、歯周病は歯と歯ぐきのすき間(歯周ポケット)にP.g菌などの歯周病菌が入り込んで歯肉に炎症が起こり、進行すると歯槽骨が溶けて歯が抜けてしまう病気です。虫歯菌が歯を、歯周病菌が歯肉や骨の病気と考えるとわかりやすいでしょう。
 

口の健康は全身の健康づくりと深い関係

歯の病気は全身のさまざまな病気と関連していることがわかっています。とくに歯周病は、全身疾患(糖尿病 、関節リウマチ 、脳梗塞(脳卒中)、動脈硬化に伴 う狭心症・心筋梗塞等 )、呼吸器疾患、慢性腎臓病、生活習慣(喫煙等) 、妊 娠や内臓脂肪型肥満等との関連が報告されています。また、内臓脂肪型肥満や動脈硬化の進行にも影響するといわれており、脳梗塞の原因となる心房細動のリスクも高めます。

 

とくに糖尿病は、歯周病と相互に影響し合うといわれています。歯周病があると糖尿病の治療を受けていても血糖コントロールが不良になりやすいといわれており、糖尿病があると、免疫系の機能や末梢血管の循環が障害されるため、歯周病が悪化しやすくなります。歯周病は歯を失う原因となり、糖尿病も進行すると合併症のリスクが高まります。

 

とくに歯周病の初期では痛みなどの自覚症状が出にくく、気づかないうちに進行してしまうことがあります。毎日のケアをすることが重要ですが、「歯みがきをしているから大丈夫」と思っていても、正しい歯みがきができていなければ、歯周病のリスクはあります。歯ぐきの腫れや歯みがきのときに出血がある場合には歯科医院を受診しましょう。この段階ではまだ歯肉炎の可能性があります。歯肉炎の段階であれば、歯槽骨は吸収されていないため、適切な治療、ケアを受けることで歯周病への進行を防ぐことが可能です。

 

歯周病検診を受けよう

2008年度から健康増進法に基づく事業の一環として実施されているのが歯周病検診です。歯周病検診は40、50、60、70歳の男女が対象となっています。自治体によっては年齢に応じて口腔機能のチェックなどを受けられることもあり、費用も補助(自己負担が無料の場合もある)があります。

 

歯や歯ぐきが腫れて痛いなどの気になる症状があれば歯科医院を受診するものの、とくに問題がないときにこそ検診を受けることが重要です。かかりつけ医で定期的にチェックを受ける習慣がない人は歯周病検診を活用しましょう。
 

きれいな歯を維持する歯みがきのやり方

定期的な歯科検診を受けて歯の病気を予防、早期治療を行うこと、定期的に必要に応じて歯のクリーニング(歯面研磨)を受けることも歯垢がたまるのを防ぎます。

 

また、見直したいのが歯みがきのやり方です。1日3回歯をみがいいてもみがき残しが多いと歯周病のリスクになります。1日3回のうち、とくに就寝前の歯みがきは時間をかけて丁寧に行うようにしましょう。歯みがきは歯だけでなく歯ぐきとの間(歯周ポケット)に汚れがたまらないように、歯と歯ぐきの境目を丁寧にみがきましょう。

 

また、薬用の洗口液(マウスウオッシュ)を就寝前に行う習慣をつけましょう。夜間は唾液の分泌が減少してみがき残しがあると菌が増殖しやすくなります。虫歯菌や歯周病菌の殺菌効果のある薬用の洗口液でうがいをするのも一案です。ブラッシングや歯間ブラシなどの使用による効果を助けるものとなります。

 

ここがポイント!

・歯の黄ばみの主な原因はペリクルというタンパク質が結合したステインやタバコのヤニ汚れ

・着色汚れに対するホワイトニング(ブリーチ)は自費診療で受けることができる

・歯の病気のなかでも歯周病は糖尿病をはじめとするさまざまな病気と関連が深い

・毎日の歯のケアと定期的な歯科での健診を受けること、歯ぐきの腫れや出血があれば歯科医院を受診して歯周病の進行を防ぐことが重要


 

<参考資料>

・一般社団法人日本歯科審美学会

https://www.jdshinbi.net/

(2024年8月15日閲覧)

・公益財団法人ライオン歯科衛生研究所:歯と口の健康研究室

https://www.lion-dent-health.or.jp/labo/

(2024年8月15日閲覧)

・特定非営利活動法人日本臨床歯周病学会:歯周病について

https://www.jacp.net/perio/about/

(2024年8月15日閲覧)

・e-ヘルスネット:歯・口腔の健康 歯周病とは

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-03-001.html

(2024年8月15日閲覧)

・厚生労働省:歯周病検診マニュアル2023

https://www.mhlw.go.jp/content/001253380.pdf

(2024年8月15日閲覧)

・厚生労働省:iiha-からだの健康、お口から-

https://iiha.mhlw.go.jp/

(2024年8月15日閲覧)

 

石岡由理佳(いしおか ゆりか)

石岡由理佳
(いしおか ゆりか)

明海大学歯学部歯学科を卒業後、臨床研修医を経て埼玉県内の歯科医院に勤務。その後、東京医科歯科大学大学院生体補綴歯科学分野に入学し、博士号(歯学博士)を取得。現在、東京都と埼玉県内の歯科医院、病院勤務。