生活習慣の見直しで乳がんの再発リスクに備える
2022.09.22

生活習慣の見直しで乳がんの再発リスクに備える

乳がんは女性ホルモンのエストロゲンや生活習慣、遺伝的要素などが発症に関与していることがわかっています。がんが乳房のみにとどまっている場合には、5年相対生存率99.3%と高くなっていますが、治療後も再発に注意が必要です。これまでにわかっている乳がんの再発予防につながる生活習慣について、そのポイントを紹介します。

乳がんは手術後も長期の再発予防対策が必要

がんは主な治療が終わった後も検査を受け、治療の効果が続いているか、転移や再発がないかなどを定期的に確認することが重要です。


一方で乳がんに関しては、症状がないときの定期的な検査が生存率向上につながらない可能性があることも指摘されています。再発乳がんは、乳房にとどまっている段階で発見し、治療が可能な初発とは異なり、血液やリンパによって乳房以外のところに運ばれたものです。初発の乳がんの治療後に定期的に検査を受けて再発を早期にみつけたとしても、根本的な治療がむずかしく、再発した段階で進行を遅らせたり、症状を緩和したりする治療が中心となります※1。そのため、乳がんは初発の治療の段階で再発予防を目的とした治療を行うことがあります。また、患者さん自身による再発予防のための生活習慣の見直しが重要となります。


ただし、乳がん治療後に定期的な検査を受けなくてもよいというわけではありません。治療した反対側の乳房に新たながんができることがあるためです。過剰な検査は不要ですが、主治医の指示のもと、定期的な受診と検査を受けましょう。

乳がんの再発

がんの治療成績は「5年相対生存率」で見るのが一般的です。5年相対生存率とは、がんと診断された場合に治療でどのくらいの生命を救えるかを示すもので、この場合は乳がんと診断された人が5年後に生存している割合と、日本人(性別、年齢などが同じ)全体で5年後に生存している人の割合とを比較したものです。100%に近いほど治療により生命を救うことができることになります※2


乳がんの再発は、手術後5年前後までに起こることが多いとされていますが、10年後、20年後にも再発する可能性があるのが特徴です※3。そのリスクを抑えるために、乳がんは術前あるいは術後に再発予防を目的とした治療を行うことがあります。

食事や運動、喫煙などの生活習慣は乳がん再発の原因になる?

乳がんの再発リスクについては、いくつかの研究報告があります。そのなかでとくに生活習慣との関連が深いものが肥満と喫煙です。


【肥満】

乳がんの発症リスクのひとつとして知られているのが肥満です。最初に乳がんと診断されたときに肥満だった人は、乳がん再発リスクがそうでない患者さんにくらべて、1.4〜1.8倍になることがわかっています※4


【喫煙】

喫煙が乳がん治療後の再発リスクを高めるかどうかについては、はっきりとわかってはいないものの、喫煙が乳がんの発症リスクを高める可能性が高いことはわかっています。がん以外でも生活習慣病などのリスクになることから、喫煙の習慣がある人は、早く禁煙を開始しましょう※4

乳がんの再発予防を目的とした治療

乳がんは、術前にがんを薬によって小さくし、手術でしっかりとりきること、あるいは手術によってとりきることができなかった可能性がある場合に手術後に抗がん薬などによる治療を行うことで再発のリスクを下げることができるといわれています。このとき使用する薬は、患者さんの乳がんの性質に応じて選択します。


再発のリスクが高い人とそうでない人の判断はむずかしいものの、副作用を伴う抗がん薬などの治療をすべての乳がん患者さんに行うことは、患者さんの負担を増大させる可能性があります。そのため、薬による再発予防効果(メリット)と、薬による副作用(デメリット)を考慮したうえで、メリットが高い人に対して行われるのが一般的です。主治医と十分に相談のうえ、納得したうえで治療法を選択しましょう※5

乳がん再発の予防につながる肥満の解消

生活習慣に関連する乳がんの再発については、そのリスクを上昇させる肥満の解消が重要であり、すべての乳がん患者さんで、適切な食事管理と運動が推奨されています。

食事

肥満につながる食事に脂肪の摂取があります。脂肪を多く含む食事が乳がん再発リスクを高めるかどうかについては明らかになっていませんが、肥満を避けるためには、脂肪のとりすぎに注意が必要だといえるでしょう※4


また近年、乳製品をとることで乳がんの発症リスクを抑えられる可能性があることが指摘されていますが、乳がん再発リスクとの関係についてはまだ明らかになっていません※6。乳製品をとることのメリットの一方で、脂肪分が多い乳製品を多くとることは肥満につながることもあります。極端な食事は避け、栄養バランスを重視すること、肥満の人は、エネルギー摂取量を抑えることが重要です。


アルコールについては、乳がんの再発リスク、死亡リスクの高める可能性は低いとされています。しかし、アルコールは乳がん発症のリスクを高めることがわかっているため、新たながんの発症を防ぐためにも飲酒は控えめにした方がよいでしょう。

大豆製品は食事で上手に取り入れましょう※7

大豆やイソフラボンの摂取と乳がん発症の関係については、いくつかの研究報告があります。たとえば、1日3杯以上みそ汁を飲む人は乳がんの発生率が0.6倍に減少することがわかっており、多く飲む人ほどそのリスクが抑えられることが報告されています。


一方、大豆食品の摂取が乳がんの再発リスクを抑えるかどうかについては、まだわかっていないことが多いものの、リスクを抑えられる可能性があるとされています。ただし、みそ汁のように塩分が多い食事は別の病気のリスクにもなります。また、サプリメントは主治医と相談のうえ、上手に取り入れましょう。

運動

乳がん診断後に適度に運動を行うことは、乳がんの再発リスクや死亡リスクを抑えることにつながる可能性が高いとされています。がん治療後に適度な運動を行うことでQOL(生活の質)の向上も期待できます。


乳がんと診断された人のなかで、週1時間程度のウォーキングに相当する運動を行っていた女性では、ほとんど運動をしていなかった女性にくらべて、すべての死亡リスクが約40%低かったことがわかっています。また、乳がん再発リスクについても約25%、乳がんによる死亡リスクは約35%低くなっていたことが示されています※4


運動は、乳がんの再発リスクにつながる肥満の解消に役立つだけでなく、肥満ではない人にも再発リスクを低下させることがわかっています。また、がん患者さんは心理的な影響から不安や抑うつなどを抱えることも少なくありません。運動は、心理面においてもよい状態を保つことに役立ち、QOL(生活の質)の向上も期待できます。体力が低下しているときは無理に行わず、体調や体力に問題がなければ、ウォーキングや軽いジョギングなどの運動を週1時間以上行いましょう。

ここがポイント!

  • 乳がんは術後5年前後の再発が多いものの、10年後、20年後に再発することもあるのが特徴
  • 肥満や喫煙が乳がんの再発リスクになる可能性がある
  • 肥満を防ぐために、脂肪のとりすぎに注意が必要
  • 大豆製品が乳がん再発リスクを下げる可能性があるが、極端な食事は避け、大豆製品を適度にとりいれよう
  • 運動は、乳がんの再発リスクや死亡リスクを抑えることにつながる可能性が高く、QOL(生活の質)向上も期待できる

引用・参考資料


※1 日本乳癌学会:患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版 初期治療後の診察と検査 Q39.手術後の経過観察はどのように受けたらよいでしょうか。

https://jbcs.xsrv.jp/guidline/p2019/guidline/g5/q39/(2022年8月10日閲覧)

※2 がん情報サービス:用語集 5年相対生存率

https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/modal/5year_relative_survival_rate.htmlv(2022年8月10日閲覧)


※3 日本乳癌学会:患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版 再発・転移の治療について Q40再発・転移とは、どのような状態なのでしょうか。

https://jbcs.xsrv.jp/guidline/p2019/guidline/g6/q40/(2022年8月10日閲覧)

※4 日本乳癌学会:患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版 療養上の諸問題について Q.57生活習慣と乳がん再発リスクとの関連について

https://jbcs.xsrv.jp/guidline/p2019/guidline/g8/q57(2022年8月10日閲覧)

※5 日本乳癌学会:患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版 初期治療を受けるにあたって Q.再発予防のための術前もしくは術後の薬物療法はどのように決めるのでしょうか

https://jbcs.xsrv.jp/guidline/p2019/guidline/g4/q38/(2022年8月10日閲覧)

※6 日本乳癌学会:患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版 原因と予防について Q1.食生活・生活習慣・持病と乳がん発症リスクについて

https://jbcs.xsrv.jp/guidline/p2019/guidline/g1/q1/(2022年8月10日閲覧)

※7 国立がん研究センターがん対策研究所予防関連プロジェクト:大豆・イソフラボン摂取と乳がん発生率との関係について

https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/258.html(2022年8月10日閲覧)

吉丸真澄(よしまる ますみ)

吉丸真澄
(よしまる ますみ)

吉丸女性ヘルスケアクリニック院長
https://yoshimaru-womens.com/
金沢大学医学部卒業後、国立病院機構東京医療センター、東京歯科大学市川総合病院に勤務。2012年に東京歯科大学市川総合病院産婦人科助教に就任。2020年に吉丸女性ヘルスクリニックを開業。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医、日本抗加齢医学会認定抗加齢専門医、日本医師会認定健康スポーツ医、NR・サプリメントアドバイザー