むくみとりのセルフケアと知っておきたい危険なサイン

むくみとりのセルフケアと知っておきたい危険なサイン

夕方になると靴がきつくて痛い、朝起きたら顔のむくみがひどいなど、身体のむくみに悩んでいる人は少なくありません。厚生労働省の「2019年国民生活基礎調査」によると、女性の足のむくみやだるさの有訴者率(人口1,000人に対して症状がある人)は、46.9%にのぼります※1

むくみの原因は、体質によるもののほか、生活習慣や病気などさまざまです。自分のむくみの原因を知り、セルフケアで症状を軽減しましょう。

むくみやすい人の特徴と生活習慣

夕方になると朝履いてきた靴が入らない、帰宅したら足に靴下のあとがくっきりついている、起床直後に顔がパンパンにはれている、指輪が指に食い込んで痛いなどのむくみの症状を引き起こすのは、身体の「水分」です。むくみは、医学的には「浮腫(ふしゅ)」と呼ばれ、細胞と細胞の間に水分(間質液)がたまった状態にあります。

本来、身体の水分は血管やリンパ管にのって全身をめぐっていますが、何らかの原因でこの循環がうまくいかず、身体の特定の部分にためこまれてしまうのです。とくに仕事で立ちっぱなしの人、デスクワーク中心の人など、同じ姿勢で過ごすことが多い人にむくみが起こりやすくなります。それは、全身に血液を運ぶポンプ機能を果たしているふくらはぎの筋力が弱まっているためだと考えられます。

また、冷え症だと血行が悪くなるため、水分が滞って全身がむくみやすくなります。さらに、過剰な塩分摂取やアルコール、睡眠不足など、ちょっとした生活習慣の乱れで身体がむくむこともあります。 

あなたの症状をチェック!こんなむくみには要注意!

全身へ効率よく水分を行き渡らせるポンプ機能を果たしている筋肉を増やし、肥満解消や生活習慣を整えることで体内の水分バランスが正常に戻れば、むくみは解消されます。

 

しかし、重大な疾患の症状として現れているむくみの場合、なかなか改善されないどころか、慢性的に起こります。次のようなむくみや、むくみに伴う症状があったら、危険サインかもしれません。病院を受診しましょう。

危険なくむみのサイン

  • むこうずね付近やくるぶし、足の甲を指で押すと、指のあとがついたまま戻らない
  • 片方だけ、もしくは左右差が大きいむくみがある
  • 体重の増減が激しい(数日、日内で数㎏変化する)
  • 尿の量が減った、色が濃い
  • 太ももやふくらはぎの血管が浮き出て見えるようになった
  • 息切れやだるさ、疲れがとれない
  • 運動やマッサージでむくみを改善しよう

    ヒトの身体は約7割が水分です。そのため、ちょっとしたことでむくんでしまいますが、自分でコントロールできるケースが多いのです。とくに下半身の筋肉を鍛えたり、血行をよくする生活習慣を身につけたりすることが効果的です。

     

    ①足の体操・運動

    末梢の血管から心臓へ血液を戻りやすくします。朝晩にベッド上で仰向けに寝て、手足を上にあげてブルブル振ります。

    立ち仕事が多い人は、かかとの上下運動をしたり、デスクワーク中心ならば、仕事の合間に足首を曲げ伸ばししたりグルグル回します。

    【ふくらはぎのむくみが気になるときの運動】

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    仰向けになって行う「エア自転車こぎ」は、効果がすぐに現れやすい運動です。腰を上げなくても効果があるので、無理をせず自分に合った運動をしてください。

    ②マッサージ

    ふくらはぎや足の裏、太ももなどを末端から身体の中心部に向かって手で圧をかけながらマッサージします。

    太もものつけ根や足首まわりなどもマッサージをすることで血行がよくなります。

    風呂あがりなど、血行がよくなっているときに行うとよいでしょう。オイルやクリームをすり込みながら行うとすべりがよくなります。

     

    ③水分・塩分などの摂取に気を配る

    水分を多くとりすぎると、腎臓での水分量の調整が追いつかず、身体がむくみやすくなります。ただし、「むくみがこわいから」と、水分を控えてしまうのは危険です。汗をかいたときなどにはしっかり水分をとりましょう。

    水分を多くとってしまうのは、塩分摂取が多いことのサインかもしれません。塩分を控えるとともに、塩分排出をうながすカリウムやミネラル類を積極的にとることを心がけます。また、体内の水分バランスを崩すお酒の飲みすぎにも注意しましょう。

     

    【カリウムを多く含む食品】

    じゃがいも、トマト、ほうれんそう、アボカド、バナナ、昆布やひじきなどの海藻類、納豆 など

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    ④機能性靴下でポンプ機能をサポート

    機能性靴下や弾性ストッキングと呼ばれる圧力(締めつけ)の強い靴下を履くことで、ふくらはぎの筋肉のポンプ機能をサポートすることができ、足がむくみにくくなります。ハイソックスタイプが多く、さまざまな圧力や色、デザインの製品が発売されています。

    ⑤生活習慣を見直す

    体重が増えると下半身の負担も増加してむくみやすくなります。肥満ぎみの人は、ダイエットと同時に下半身を鍛える運動をしましょう。下半身は大きな筋肉が多いため、ウォーキングやスクワットなどで鍛えると、早期に効果が現れます。

    また、寝るときは足の下にクッションなどを敷いて、床から10cmほど高くして寝ると、足にたまった水分が戻りやすくなります。

    ここがポイント

    • むくみは水分の滞りが原因。水分と塩分のバランスに注意しよう
    • 下半身に筋肉をつけて体内の血液・リンパ液の循環をよくすることが大事
    • なかなか治らないむくみや左右差のあるむくみは病気のサインかも。早めに病院を受診しよう

    引用・参考資料

  • ※1 厚生労働省:2019年国民生活基礎調査の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/14.pdf(2022年3月15日閲覧)

平井正文など:むくみ体質をあきらめない―医師が教える予防・解消の知恵.メディカルトリビューン,2010.

対馬ルリ子:むくみをとってやせやすくなる本(みんなの女性外来).小学館,2010.

長﨑和仁:足の先生!足のむくみ、だるさ、冷え、下肢静脈瘤どうすればラクになるか教えてください.アスコム,2021.

吉丸真澄(よしまる ますみ)

吉丸真澄
(よしまる ますみ)

吉丸女性ヘルスケアクリニック院長
https://yoshimaru-womens.com/
金沢大学医学部卒業後、国立病院機構東京医療センター、東京歯科大学市川総合病院に勤務。2012年に東京歯科大学市川総合病院産婦人科助教に就任。2020年に吉丸女性ヘルスクリニックを開業。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医、日本抗加齢医学会認定抗加齢専門医、日本医師会認定健康スポーツ医、NR・サプリメントアドバイザー