子育て世代でリスクが高い子宮頸がんの予防と検診
2023.04.14

子育て世代でリスクが高い子宮頸がんの予防と検診

子宮頸がんは、20歳代後半から増加しはじめる若い世代でも注意が必要ながんのひとつです。プライベートでもライフイベントが多い時期にあたり、仕事や家庭生活が多忙になるなかで自分の健康が後回しになりがちでもあることから、予防や定期的な検診による早期発見が重要となります。

子宮頸がんは、20歳代後半から増加しはじめる若い世代でも注意が必要ながんのひとつです。プライベートでもライフイベントが多い時期にあたり、仕事や家庭生活が多忙になるなかで自分の健康が後回しになりがちでもあることから、予防や定期的な検診による早期発見が重要となります。

子宮頸がんの原因「ヒトパピローマウイルス」とは?

子宮頸がんは、子宮から腟につながる管状の部分に発生するがんで、子宮がんの7割程度を占めています※1。令和元年の第1子出産年齢の平均が30.7歳、第2子の出産年齢は32.7歳となっており※2、20歳代後半から増えはじめる子宮頸がんの発症時期と重なります(図1)※3。罹患率の上昇に比例して死亡率も高まることから(図2)※4、子宮頸がんは、“マザーキラー”とも呼ばれています。


図1 子宮頸がんの年齢階級別罹患率(2019年)

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図2 子宮頸がんの年齢階級別死亡率(2021年)

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何年にもわたり前段階を経てがんを発症

子宮頸がんが若い世代に増えているのは、子宮頸がんの原因がかかわっていると考えられています。子宮頸がんは、そのほとんどがヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因であることがわかっています。HPVは主に性的接触によって感染するウイルスで、性交経験のある女性の過半数で感染する可能性があると考えられています。また、子宮頸がんの発症年齢が低年齢化している背景のひとつに、若年層でHPVに感染する機会が増えていること、すなわち性交年齢の若年化があるという指摘もあります。


一方、HPVに感染した人すべてががんを発症するわけではなく、その人の持つ免疫力によってウイルスが排除されることが多いといわれています。しかし、なかにはHPV感染が長期にわたり、自然治癒することなく異形成と呼ばれる前段階を経て何年もかけて子宮頸がんに進展してしまう人がいます(図3)。


図3 子宮頸がんの前段階からがんを発症するまで

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自覚症状がないまま進行

子宮頸がんの前段階である異形成の時期にはおりものや出血、痛みなどの自覚症状はなく、気づかないうちにがん化が進みます。子宮頸がんを発症し、それが進行すると生理期間以外の性交時に出血したり、茶褐色や黒褐色のおりものが増えたりすることがあります。さらに進行してしまうと下腹部や腰の痛み、血尿、血便が出ることがあります。

2023年4月から公費による定期接種が始まる「9価HPVワクチン」

HPVは、200種類以上の遺伝子型(タイプ)があり、粘膜型と皮膚型にわけられています。このうち子宮頸がんの原因と考えられているハイリスクHPVには、現在までに粘膜型の15種類が該当することがわかっています※5。子宮頸がんの予防には、このハイリスクHPVへの感染を防ぐことが重要となります。

HPVはどのように感染するの?

皮膚や粘膜に付着したハイリスクHPVの粒子は、性的接触などの刺激を受け、微細な傷から入り込みます。ウイルスが細胞内に入り込んで増殖していくなかで異形成が起こります。ただし、HPVは温泉やプールでウイルスに触れても感染することはなく、性的接触がない場合には感染することは非常に稀なことといわれています。

予防効果が高いワクチン

子宮頸がんの原因となるHPV感染を防ぐ効果が高い方法にワクチン接種があります。国内での研究報告によると、子宮頸がんの40〜60%は、HPV16型、20〜30%はHPV18型となっています※6。HPV16型、18型は感染後がんに進展するスピードが早いといわれており、とくに近年増加している20歳代の子宮頸がんの約90%がこの2つのタイプです※6


国内で接種できるHPVワクチンは、このHPV16型、18型の感染を予防することができます。現在、承認されているHPVワクチンには2価ワクチン(HPV16、18)と4価ワクチン(HPV16、18型、尖圭コンジローマの原因となるHPV6、11型)、9価ワクチンがあります。9価ワクチンは、ハイリスクHPVの7タイプ(HPV16、18、31、33、45、52、58型)の感染を予防できるものです。


HPVワクチンは、初めての性交渉前に接種することが望ましいと考えられており、有効性が高いといわれている小学校6年〜高校1年相当の女性で、公費による接種が可能です。また、1997~2005年度生まれで過去にHPVワクチンの接種を合計3回受けていない人などを対象に、公費によるキャッチアップ接種も行われています※7。9価ワクチンについては、2023年4月から対象者への公費による定期接種が始まりました※8


また、対象以上の年齢の人でワクチン接種を希望する場合には、地域の医療機関で相談しましょう。


男性のHPVワクチン接種
HPVは子宮頸がんの原因ウイルスとして知られていますが、女性だけが感染するわけではなく、男性も感染します。男性の場合は特定のHPVに感染すると、尖圭コンジローマという皮膚や性器にイボができる病気を発症することがあり、肛門がんや陰茎がん、咽頭がんなど、感染部位によってはがんの発症リスクになることもあります。現在、男性のワクチン接種は自己負担となっていますが、公費対象とする検討が進められています。

ワクチン以外の子宮頸がん予防

がん予防には、禁煙や節酒、栄養バランスのよい食事、運動で適正な体重を維持することが重要となります。また、性的接触の際には常にパートナーがコンドームを使用するなどの感染予防策をとりましょう※9。ほかの性感染症の予防にも役立ちます。ただし、HPVは外陰部や肛門などにも感染するため、コンドームのみでHPV感染を防ぐことはできません。

20歳を超えたら2年に1度は受診を!子宮頸がん検診の検査方法

HPVワクチンは、子宮頸がんの原因となるハイリスクHPVの一部について一定の感染予防効果があることがわかっているものの、がん自体を防ぐ効果については明らかになっていません。ワクチンによる予防効果が認められていないハイリスクHPVへの感染の可能性も含めると、「ワクチンを接種すれば、100%子宮頸がんにはならない」とは言えないのです。


だからこそ、ワクチン接種と定期的な検診の二段構えが重要となります。子宮頸がんは、早期の段階では自覚症状がないため、がん検診を定期的に受け、早期発見に努めましょう。早期に発見できれば、治療の選択肢も増えます。


子宮頸がんによる死亡率の減少が認められており、現在子宮頸がん検診として推奨されているのが細胞診です。また、浸潤がんの罹患率の減少効果が認められているのがHPV検査です。また、一部条件を満たす場合には細胞診とHPV検査を併用することもあります※10


ワクチン接種を受けていない人だけでなく、すでに接種している人も20歳になったら2年に1度は細胞診による子宮頸がん検診を受けましょう。

ここがポイント

  • 子宮頸がんは20歳代後半から増加しはじめるため、若い世代でも注意
  • 子宮頸がんの原因のほとんどがヒトパピローマウイルス(HPV)の感染
  • HPVの予防効果が高いのがワクチン接種で、現在小学校6年~高校1年相当の女性では、公費によるワクチン接種が可能
  • HPVワクチンには2価、4価、9価があり、9価は2023年4月から対象者への公費による定期接種が始まった
  • ワクチンを接種していても20歳を過ぎたら2年に1度は子宮頸がん検診を受けることが重要

引用・参考資料


※1 日本産科婦人科学会:子宮頸がん

https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=10(2023年3月15日閲覧)

※2 厚生労働省:令和3年度「出生に関する統計」の概況 人口動態統計特殊報告

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/syussyo07/dl/gaikyou.pdf(2023年3月15日閲覧)

※3 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)

https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/excel/cancer_incidenceNCR(2016-2019).xls(2023年3月15日閲覧)

※4 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)

https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/excel/cancer_mortality(1958-2021).xls(2023年3月15日閲覧)

※5厚生労働省厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会:9価HPVワクチンの定期接種化に係る技術的な課題についての議論のまとめ

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001014056.pdf(2023年3月15日閲覧)

※6 日本産科婦人科学会:子宮頸がん予防についての正しい理解のために Part1子宮頸がんとHPVワクチンに関する最新の知識 第4版

https://www.jsog.or.jp/uploads/files/jsogpolicy/HPV_Part1_4.pdf(2023年3月15日閲覧)

※7 厚生労働省:ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種を逃した方へ~キャッチアップ接種のご案内~

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_catch-up-vaccination.html(2023年3月15日閲覧)

※8 厚生労働省:第50回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会資料1 組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(9価HPVワクチン)について

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/001010127.pdf(2023年3月15日閲覧)

※9 R.L.Winer and Others: コンドームの使用と若年女性における性器ヒトパピローマウイルス感染(日本語アブストラクト)

https://www.nejm.jp/abstract/vol354.p2645(2023年3月15日閲覧)

※10 国立がん研究センター社会と健康研究センター:有効性に基づく子宮頸がん検診ガイドライン更新版

http://canscreen.ncc.go.jp/shikyukeiguide2019.pdf(2023年3月15日閲覧)

 

・東京都福祉保健局:TOKYO #女子けんこう部 ハタチになったら、はじめよう。子宮頸がんのこと

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/joshi-kenkobu/shikyukeigan/(2023年3月15日閲覧)

・厚生労働省:小学校6年~高校1年相当の女の子と保護者の方へ大切なお知らせ HPVワクチンについて知ってください~あなたと関係のある“がん”があります~

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000901220.pdf(2023年3月15日閲覧)

吉丸真澄(よしまる ますみ)

吉丸真澄
(よしまる ますみ)

吉丸女性ヘルスケアクリニック院長
https://yoshimaru-womens.com/
金沢大学医学部卒業後、国立病院機構東京医療センター、東京歯科大学市川総合病院に勤務。2012年に東京歯科大学市川総合病院産婦人科助教に就任。2020年に吉丸女性ヘルスクリニックを開業。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医、日本抗加齢医学会認定抗加齢専門医、日本医師会認定健康スポーツ医、NR・サプリメントアドバイザー