花粉症は、スギやヒノキなどの花粉が体内に入ると、アレルギー反応が起こり、鼻水や鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみなどの症状が出る病気です。日本では、約3000万人が花粉症に悩まされていると言われています。

花粉症の症状は、個人差がありますが、重症になると、頭痛や咳、喘息、発熱、倦怠感などの全身症状や、うつ病や不眠症などの精神症状を引き起こすこともあります。花粉症は、生活の質(QOL)を低下させるだけでなく、学業や仕事の能力にも影響を与える可能性があります。

花粉症の原因は、体内に入った花粉が、免疫システムによって異物と認識され、それを排除しようとする反応が過剰になることです。この反応によって、ヒスタミンという物質が分泌され、炎症やかゆみなどの症状を引き起こします。

花粉症の診断は、主に症状や既往歴、血液検査や皮膚テストなどによって行われます。血液検査では、花粉に対する抗体(IgE)の量や種類を調べます。皮膚テストでは、花粉の抽出液を皮膚に塗布して、アレルギー反応の有無や程度を確認します。
 

 

2024年の流行予測 ※1

スギ花粉は、全国的に飛散量が平年より多くなる見込みで、特に東北や関東、中部、近畿、中国、四国地方では、飛散量が平年の1.5倍~2倍になる可能性が高いと予測されています。スギ花粉の飛散開始時期は、平年より早くなる傾向にあり、1月下旬から2月上旬にかけて南西諸島や九州地方から始まり、2月中旬から3月上旬にかけて本州や四国地方に広がると予測されています。スギ花粉の飛散終了時期は、平年より遅くなる傾向にあり、4月中旬から5月上旬にかけて北海道や東北地方で終わると予測されています。

ヒノキ花粉は、全国的に飛散量が平年より多くなる見込みで、特に関東や中部、近畿、中国、四国地方では、飛散量が平年の1.5倍~2倍になる可能性が高いと予測されています。ヒノキ花粉の飛散開始時期は、スギ花粉よりも遅くなる傾向にあり、2月下旬から3月上旬にかけて南西諸島や九州地方から始まり、3月中旬から4月上旬にかけて本州や四国地方に広がると予測されています。ヒノキ花粉の飛散終了時期は、スギ花粉よりも早くなる傾向にあり、4月中旬から5月上旬にかけて北海道や東北地方で終わると予測されています。

その他の花粉は、イネ科やカモガヤ科などの雑草花粉や、ブタクサやヨモギなどの雑草花粉、キク科やヒマワリ科などの花粉などがあります。これらの花粉は、主に夏から秋にかけて飛散しますが、気温や降水量などの気象条件によって飛散量や時期が変わることがあります。これらの花粉に対するアレルギー反応は、スギやヒノキ花粉に比べて軽いことが多いですが、個人差がありますので、注意が必要です。

花粉症の流行予測は、気象条件や花粉の種類や量によって変わることがありますので、最新の花粉情報をチェックして、花粉症の予防や対策を行いましょう。
 

花粉症の予防と対策

まずは家の中に花粉が入らないように気をつけましょう。外出時は、帽子やメガネやマスクなどを着用して、花粉の侵入を防ぎます。マスクは顔に合ったサイズを選び、鼻から顎まで隠れるようにして、くしゃみや鼻水で内側が汚れたらすぐに交換しましょう。帰宅時は、衣服やペットなどについた花粉を払ってから入室します。帰宅後はうがいや洗顔をして花粉を洗い流しましょう。スチーム吸入によってのどや鼻の粘膜をケアするのも効果的です。室内ではドアや窓を閉めて、空気清浄機を使用します。掃除はこまめに行って、布団やカーペットなどの花粉のたまりやすいものは清潔に保ってください。布団は外に干さないか、干した場合は花粉を払ってから取り入れるようにして、枕元の花粉も拭き取ります。

花粉症の予防と対策には、十分な睡眠をとることも大切です。たとえ眠れなくても、目を閉じて体を横にして休めているだけで、免疫力は高まると言われています。少しの間の昼寝でもよいでしょう。10~20分と短い睡眠でも精神の疲労を回復させると共に、免疫力を高めてくれます。また、適度な運動をすることで、体内にウイルスが侵入してきたときに体を守る白血球=免疫細胞がより活発に働くようになります。ウォーキングやジョギングなどの適度な有酸素運動の継続が免疫力を高めます。ストレスも免疫の乱れの大敵です。ストレスが免疫機能を低下させる仕組みとしては、自律神経のバランスが崩れることと、ステロイドホルモンの放出が考えられています。自律神経のバランスを整えるためには、笑うことやリラックスすることが効果的です。喫煙をしないことも大切です。タバコは体中の血管収縮作用による体温低下と血圧上昇より、免疫力が低下します。

体質改善も重要です。辛いものやアルコールなどの症状を悪化させる食品は控えましょう。飲み物では水分を十分に摂ります。花粉症は、体内の免疫機能のバランスが悪くなってしまうことによって起こる症状です。この免疫機能を正しくしてあげれば、花粉症の発症を軽減することができます。免疫は細胞自体が元気でないと働きません。細胞に充分な栄養を蓄えるためにまずは生活習慣を整えバランスの良い食事を心がけ免疫力をアップさせましょう。

毎日3食欠かさず食べましょう。食事を抜くことが多いと栄養不足になり、感染症にかかると重症化しやすくなります。できるだけ和食中心で魚や野菜、穀類を多く摂ります。緑黄色野菜に豊富なβカロテンは抗酸化作用があり、体の免疫力を高めてくれます。また腸には多くの免疫細胞が存在するため、腸内環境を整えることは免疫力アップにつながります。腸内環境を整える効果がある善玉菌を増やす食品をとりましょう。善玉菌を増やす食品として乳酸菌が含まれているチーズやヨーグルト・キムチやぬか漬け・味噌があります。乳酸菌は発酵によって糖から乳酸をつくる嫌気性の微生物の総称です。乳酸菌は腸内で大腸菌など悪玉菌の繁殖を抑え、腸内菌のバランスをとる役割を果たしています。そして便通の改善だけではなく、コレステロールの低下や免疫機能を高めがんを予防するなど、さまざまな働きがあると言われています。最近ではピロリ菌を排除するなど、特徴のある機能を持つ乳酸菌も研究されています。※2

かんたん腸活~乳酸菌編~

☆チーズをのせてあつあつトースト

☆ハムと柴漬けなど漬物を刻んでタルタルソースにしロールパンにはさんでドック風に

漬物タルタルに野菜をつけてディップでも。

☆ヨーグルトに自然な甘さのはちみつと果物をトッピング

☆和食の朝食なら納豆とらっきょう漬けでプラス乳酸菌

☆冬野菜たっぷりチーズをのせてドリア・グラタン

☆オニオングラタンスープにとろけるチーズをたっぷりと
 

花粉症治療の流れや対症療法

花粉症の診断は症状や問診で行われますが、原因の特定のために血液検査や皮膚テストなどを行うこともあります。

花粉症の治療には、薬物療法、免疫療法、レーザー治療などがあります。薬物療法は、症状を抑えるために、抗ヒスタミン薬やステロイド薬などの薬を服用したり、点鼻したり、点眼したりする方法です。免疫療法は、花粉症の原因となる花粉を体内に少量から徐々に増やして投与し、花粉に対する耐性を高めることで、花粉症自体を治す方法です。薬物療法は、症状が出てから服用することもできますが、花粉の飛散開始前から服用することで、より効果的に症状を予防することができます。薬物療法には、眠気やのどの渇きなどの副作用があることもありますので、医師の指示に従って服用しましょう。

免疫療法には、皮下免疫療法と舌下免疫療法があります。皮下免疫療法は、薬剤を皮下に注射して投与する方法で、通院するだけで毎日薬を飲む必要がなく、ダニやスギに対して効果があります。舌下免疫療法は、舌の下に直接薬をつける方法で、毎日自宅で服薬する必要がありますが、注射が苦手な方には適しています。舌下免疫療法には、スギ花粉に対して有効な薬があります。免疫療法は、薬物療法と比べて、長期間(2~3年)かかりますが、花粉症を根治する可能性が高いと言われています。免疫療法には、アレルギー反応が起こる可能性がありますので、医師の判断と指導のもとで行いましょう。

 レーザー治療は、鼻の粘膜にレーザーを照射して、鼻づまりや鼻水などの症状を改善する治療法です。レーザーによって鼻の粘膜が収縮し、花粉に対するアレルギー反応が抑えられます。手術は不要ですが、レーザーによる刺激で一時的に症状が悪化する場合があります。この場合でも、適切なアフターケアで症状を最小限に抑えることができます。手術が不要で効果は数年間持続しますが、保険適用外で費用がかかり、効果に個人差があります。レーザー治療は、薬物療法で効果が不十分な場合や、薬物療法が難しい場合に適応されます。レーザー治療の流れは、問診と検査、局所麻酔、レーザー照射、安静の4つのステップで行われ、1回の治療時間は約30分です。レーザー治療後は、激しい運動や飲酒を控え、鼻づまりや鼻水などの症状が悪化する可能性があることに注意しましょう。

まとめ
花粉症は誰でもかかる可能性のあるアレルギー疾患ですが、重症になると全身症状や精神症状を引き起こすこともある病気です。花粉を避ける対策はもちろん、生活習慣や体質改善をすることがとても重要です。
 

ここがポイント!

・花粉症は、スギやヒノキなどの花粉が体内に入ると起こるアレルギー疾患で、2024年は花粉の飛散が多くなる見込みです。

・マスクやメガネだけでなく、生活習慣を見直したり体質改善を行ったりして予防しましょう。

・花粉症に悩んでいる方は医師に相談の上で治療を受けてみてください。

 

※1 日本気象協会、2024年 春の花粉飛散予測(第2報)
https://tenki.jp/pollen/expectation/

※2 出典:厚労省webサイト eヘルスネット 乳酸菌
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-026.html

 

冨永 洋一  (とみなが よういち)

冨永 洋一
(とみなが よういち)

社会医療法人愛仁会 愛仁会総合健康センター 所長

 

神戸大学医学部卒業。神戸大学医学部第二内科(現 糖尿病内分泌内科)入局。神戸大学医学部附属病院内科、兵庫県立加古川病院内科、城陽江尻病院内科、神戸海岸病院内科、独立行政法人国立病院機構兵庫中央病院内科、社会医療法人愛仁会高槻病院 糖尿病・内分泌内科勤務を経て、現在社会医療法人愛仁会 愛仁会総合健康センター所長を務める。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会専門医、人間ドック健診専門医、日医認定産業医、医学博士。