冬の感染症対策

冬の感染症対策

冬は乾燥の季節です。乾燥とともに様々な感染症が流行しやすくなります。今回は冬の感染症について正しく理解し、リスクを減らすための情報をお届けいたします。
 

 

冬の感染症とは

冬になると、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症が流行しやすくなります。これらの感染症はウイルスが原因で起こりますが、なぜ冬に流行するのでしょうか。

冬は気温が低く、空気が乾燥しています。このような環境では、ウイルスが活動しやすく、人の粘膜が乾燥してウイルスに対する抵抗力が低下します。また、冬は暖房器具を使って室内で過ごす時間が長くなるため換気が悪くなり、ウイルスが室内に滞留しやすくなります。このような室内では人と人との接触も多くなり、ウイルスの感染経路が増えます。さらに、冬の短い日照時間で人の体内時計が乱れて睡眠不足やストレスが生じやすくなり、ビタミンDの生成が減少し、免疫力が低下することも原因の一つと考えられます。

代表的な冬の感染症としては、インフルエンザとノロウイルスがあります。

インフルエンザとは、インフルエンザウイルスに感染して起こる呼吸器感染症の一種です。インフルエンザウイルスは、人から人へ飛沫感染や接触感染で広がります。インフルエンザウイルスにはA型、B型、C型の3つのタイプがありますが、人間に感染するのは主にA型とB型です。A型はさらにHとNという2つのタンパク質によって細かく分類されます。A型のインフルエンザウイルスは、これらのタンパク質の組み合わせが変わることで新しいウイルスが誕生することがあります。これを新型インフルエンザと呼びます。新型インフルエンザは、人間の免疫システムが対応できないため、重症化したり、パンデミックを引き起こしたりする可能性があります。インフルエンザの症状は、38℃以上の高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、倦怠感などの全身症状と、のどの痛み、鼻水、咳などの呼吸器症状です。症状は通常4~5日で治まりますが、お子様やご高齢の方、基礎疾患のある方などは、インフルエンザによって脳炎や肺炎などの合併症を起こすことがあります。そのため、インフルエンザにかかった場合は、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。※1

ノロウイルスとは、ノロウイルスというウイルスによって引き起こされる急性胃腸炎のことです。ノロウイルスは、小型球形ウイルスとも呼ばれ、電子顕微鏡で見るとコップ状の窪みがあります。ノロウイルスは、食品や水、汚染された物品、感染者の糞便や吐物などを介して経口的に感染します。感染すると、嘔吐や下痢などの症状が1〜2日の潜伏期の後に現れます。ほとんどの場合は数日で自然に治りますが、脱水症状に注意が必要です。ノロウイルスは、冬に多く流行することから冬型の胃腸炎とも呼ばれます。ノロウイルス感染症の予防には、手洗いや食品の衛生管理、感染者の隔離とともに感染の蔓延をふせぐために感染者の糞便や吐物による汚染物の処理が重要です。ウイルスを完全に失活(活性が失われ反応を起こさなくなる)させるために次亜塩素酸ナトリウムや亜塩素酸水による消毒が必要です。※2
 

冬の感染症の予防と対策

冬の感染症から身を守るためには、以下のような予防と対策が必要です。

  • ・予防接種を受ける

インフルエンザなどの感染症に対する予防接種は、感染する可能性を減らし、重症化を防ぐ効果があります。流行する前に受けることが望ましいです。

  • ・手洗い・うがい・マスクをする

感染経路を断つために、帰宅時や調理の前後、食事前などにこまめに手洗いをしましょう。アルコール消毒も効果的です。外出時や人混みに出かけるときにはマスクを着用しましょう。咳やくしゃみをするときにはティッシュやハンカチで口と鼻を覆いましょう。

  • ・食品の衛生管理をする

ノロウイルスなどの食中毒を防ぐために、肉や魚介類は生食を避け、加熱して食べましょう。85℃以上、90秒以上の加熱でウイルスは死滅します。また、感染した人が調理に関わらないようにしましょう。食器や調理器具は熱湯で洗浄しましょう。

  • ・免疫力を高める

十分な睡眠とバランスのよい食事を心がけましょう。ビタミンCやビタミンDなどの栄養素を摂取すると、免疫力が向上します。乳酸菌などの善玉菌を摂取すると、腸内環境が整い、免疫力が高まります。※3
 

冬の感染症にかかったときの対処法

どれだけ対策をとっていても感染症にかかってしまうことはあります。そんなときにも慌てず対処しましょう。冬の感染症にかかってしまったときには、以下のような対処法があります。

  • ・医療機関を受診する

まずは、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症などの可能性を排除するために、医療機関で診察を受けることが重要です。症状に応じて、抗生物質や抗ウイルス薬などの薬が処方される場合があります。インフルエンザの場合、発症から48時間以内に受診すると非常に効果的です。重症化のサインが見られる場合にも、早めに受診しましょう。重症化のサインとしては、呼吸困難、意識障害、脱水症状などがあります。

  • ・水分と栄養を補給する

発熱、発汗、嘔吐、下痢などで水分や栄養が失われると、脱水症状を引き起こし体力が低下します。水分はこまめに補給しましょう。スポーツドリンクや経口補水液などがおすすめです。また、食欲がなくても、消化の良いものやビタミンやミネラルが豊富なものを少量でも食べることで、免疫力を高めることができます。消化の良いものを少量ずつ摂取しましょう。おかゆやうどんなどが適しています。

  • ・休養をとる

感染症の症状がある間は、自宅で安静にすることが望ましいです。熱が下がっても、ウイルスは体内に残っている可能性があるので、学校や職場の許可がでるまで休みましょう。また、家族や友人などに感染を広げないために、咳エチケットを心がけましょう。咳やくしゃみが出るときは、マスクを着用したり、ティッシュや腕の内側で口と鼻を覆ったりしましょう。

  • ・乾燥を防ぐ

空気が乾燥すると、のどの粘膜の防御機能が低下し、感染症にかかりやすくなります。加湿器などを使って、室内の湿度を適切に保つことも効果的です。湿度は50%から60%が目安です。

 

冬はインフルエンザやノロウイルスなど感染症が流行しやすい季節です。これらの感染症から身を守るために、予防と対策をしっかりと実践しましょう。ワクチン接種、手洗い・うがい・マスク着用など、簡単な対策を確実に行いましょう。また、感染症にかかってしまったときには、慌てず早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
 

免疫力を高める食事

身体の免疫力を高めて、風邪など感染症を予防しましょう!

風邪など感染症予防には、身体の免疫力を高めるたんぱく質とビタミンなどバランスよく食べよう!

風邪など感染症の予防には、バランスよく食べることが大事になります。生活習慣病を予防し、健康な身体を作っていきましょう。※4

  • ①欠食せずに3食食べること
  • ②主食・主菜・野菜のおかずなどをバランスよく食べること。

 

冬野菜のビタミンもおすすめです!                    

冬の野菜はとくにビタミンが多いので、風邪予防のために食べたいですね。ビタミンやカロテンなどの栄養価を多く含む野菜は、免疫力を高め、風邪の予防にも効果があるといわれています。いいことづくしの冬野菜、煮物や鍋など、体が芯から温まる料理に使って、寒い冬を乗り切りましょう。※5

 

疲労回復効果のある豚肉と大根の甘辛炒めや鮭のムニエル(ほうれん草ソテー添え)、栄養いっぱいの卵とほうれん草の卵とじなど、たんぱく質と一緒に摂るとさらにバランスが良くなります。鮭と大根、しめじなどのキノコ類を入れた、あったか粕汁もおいしいですよ。

 

風邪にかかってしまったら。「安静、水分・栄養補給」※6 が大事!

あたたかくしてゆっくりと安静にすること。(活動に使うエネルギーを減らす)水分や栄養補給(身体を治すためのエネルギー)が大事です。

室温が下がって体温が下がると、循環器病や呼吸器疾患のリスクが高まります。※7

さらに空気が乾燥することで、喉を痛め炎症が起きやすくなります。

★あたたかい蒸気を吸う、飲み物を飲むことで身体をあたため、気道も広がり、痰を出しやすくなります。

★喉が痛いときは、とろみをつけると飲み込むときの負担が減ります。

 

温かい飲み物で胃腸を温め、体温を上げよう!                    

白湯を飲むことも胃腸を温めるのに良いと言われています。他にもすぐ飲めるものにはホットミルクやお茶、くず湯などもおすすめです。

 

食欲が出ないときは、食べやすいものから。                                                                     

食事がとりにくい時は糖質やビタミンの入ったスポーツ飲料や、のどが痛いときは飲み込みやすいゼリーやプリンなどもおすすめです。先生から食事の指示のある方は、量に関してお伺いすると安心かと思います。

 

水分補給には利尿作用のあるコーヒーや緑茶などより、お茶や水がおすすめです。また喉や胃の粘膜を刺激するので、香辛料や食物繊維の多いものなども控えるといいでしょう。※8 
 

身体の免疫力を高めるたんぱく質や、身体の働きを助けるビタミンを摂っていきましょう!

 

消化の良いたんぱく質

卵:卵豆腐、茶碗蒸し(食物繊維の多い具は回復後に)、ミルクセーキ、プリンなど。

豆:豆乳、煮豆腐、豆腐卵とじなど。

乳製品:ホットミルク、ヨーグルト、アイスミルク、ババロアなど。

(魚:白身魚など薄味の煮魚もおすすめです。)

 

 

身体の働きを助けるビタミン

ホットミルクも身体が温まりますが、のどが痛いときはババロアなどツルンと食べられるものがおすすめです。

ママレードや柚子ジャム(皮は除いて)をかけてもおいしいですよ。

風邪から回復してきたら。

胃腸の負担の少ないものから、少しずつ食べる量を増やせたらいいですね。消化に良いものからがおすすめです。少しでも食べられるようなら、鮭フレークや卵などの雑炊や優しい味の卵とじうどん、野菜のポタージュスープなども身体が温まるかと思います。

消化時間のかかるものは胃腸や身体に負担がかかるので、食物繊維の多い根菜類や、揚げ物などの油物、トウガラシなどの香辛料のような刺激物は体調が回復してからがいいでしょう。※8

 

体温を1度上げると免疫力が上がると言われています。食事を摂ると体温が上がるので、胃腸から身体を温めていきましょう!※4

 

簡単な温まる1品                    

胃腸から身体を温めるためにも、何か温かい1品があるとホッとしますね。消化に優しい野菜スープなどがおすすめです。お好みでコンソメやコーンスープ、ポタージュスープもいいですね。またたんぱく質の入った卵とじスープや、食べられそうならゴマの効いた中華わかめスープ、味噌汁やポトフなどもお腹の温まるメニューですね。
 

ここがポイント!

・冬の感染症は、冬の気候や生活習慣が原因で流行する。

・冬の感染症にかかるリスクを減らすためには予防と対策が重要。

・感染症にかかった場合は早めに医療機関を受診する。

引用・参考資料

※1 国立感染症研究所「インフルエンザとは」

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/219-about-flu.html

 

※2 国立感染症研究所「ノロウイルス感染症とは」

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/452-norovirus-intro.html

 

※3 首相官邸ホームページ「インフルエンザ(季節性)対策」

https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/influenza.html

 

※4 出典:滝沢市webサイト 食事と免疫力について

https://www.city.takizawa.iwate.jp/life/taki_kenko/kenko/hyougobosyu_copy/sandoudanntai/_12685.html

 

※5 出典:農林水産省webサイト  冬に旬を迎える野菜って?

https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1912/spe2_01.html

 

※6 一般社団法人 日本呼吸器学会 呼吸器の病気 A.感染性呼吸器疾患 かぜ症候群

https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/a/a-01.html

 

※7 出典:国土交通省webサイト 省エネ住宅でかなう健康&快適生活

https://www.mlit.go.jp/shoene-jutaku/health-effects/index.html

 

※8 出典:農林水産省webサイト カプサイシンに関する情報                                      

https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/capsaicin/                                            

冨永 洋一  (とみなが よういち)

冨永 洋一
(とみなが よういち)

社会医療法人愛仁会 愛仁会総合健康センター 所長

 

神戸大学医学部卒業。神戸大学医学部第二内科(現 糖尿病内分泌内科)入局。神戸大学医学部附属病院内科、兵庫県立加古川病院内科、城陽江尻病院内科、神戸海岸病院内科、独立行政法人国立病院機構兵庫中央病院内科、社会医療法人愛仁会高槻病院 糖尿病・内分泌内科勤務を経て、現在社会医療法人愛仁会 愛仁会総合健康センター所長を務める。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会専門医、人間ドック健診専門医、日医認定産業医、医学博士。